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今こそシミュレーションすべき

 各社とも、最適な生産地を求めて国々をさまよっている。前回述べた通り、ベトナムを選択する企業が多い。しかし、その部材をどこから調達するのかについては、まだ検討中のようだ。ベトナムに行かず、あえて中国を使い続ける企業や、日本への生産回帰を選択する企業もあるだろう。

 そこで、私が紹介したいのは「輸入限界係数」だ。これで生産最適地や輸入の可否が分かる。

 例えば、ここでは日本と米国の関係を考えてみよう。製品Aについて、日本で生産した場合と、米国で生産した場合のコストを用意する。

輸入限界係数=製品Aを日本で生産した場合のコスト(日本円の絶対値)÷製品Aを米国で生産した場合のコスト(米ドルの絶対値)

 分母も分子も各国通貨での絶対値を用いる。これで輸入限界係数を計算できる。

 より具体的な数字で計算してみよう。日本生産は100円、米国生産は1ドルだったとする。そうすると、輸入限界係数は以下になる。

輸入限界係数=100÷1=100

 これを為替レートと比較する。輸入限界係数が為替レートよりも大きければ、輸入する価値がある。逆に小さければ、輸入する意味がない。

 例えば、前出の例で為替レート1ドル=110円だった場合、輸入限界係数が為替レートよりも小さいので、米国で生産して日本に輸入することは合理的ではない。考えてみれば分かるが、米国で生産するコストは1ドルだから日本円だと110円。仮に輸送費や保険料、関税が全くかからなかったとしても、米国生産に意味はない。逆に米国から考えてみると、日本で生産すると約0.9ドルだから、日本から輸入する価値があるといえる。

 この輸入限界係数の面白い点は、最終的には為替レートと比較するが、係数そのものは為替レートの影響を受けない点だ。あくまでも、2国間の現地生産コストを比較する。

 しつこいが、別の例を考えてみよう。日本生産は200円、米国生産は1ドルだとする。

輸入限界係数=200÷1=200

 為替レートがやはり1ドル=110円だったとすると、輸入限界係数は圧倒的に為替レートの絶対値よりも大きい。これなら、日本から見ると米国から輸入した方が良いということになる。