PR
全3190文字

「だから、全部止めてやるって言っているんだよ!」

 会議室でそんな罵声を浴びさせられたら、あまり気持ちが良いものではない。

 私は20歳代の頃、メーカーの調達部門で働いていた。2000年代のことだ。調達部門というと、現代では人手不足もあって調達部品をかき集めるのが大変だ。建設現場では人員すら集まらない。ただし、当時はまだ買い手が優位。さらに、有名企業が調達コストに目を付けて、その削減が利益源になると注目され始めた時期だった。

 多くの企業は「選択と集中」の名の下、複数社購買から1社購買に切り替えようとしていた。「集約するから安くしてくれ」というわけだ。結果的に、1社購買はその後の東日本大震災で大きな曲がり角を迎える。1社からしか調達していないと、災害発生時にサプライチェーンが脆弱になる。しかし、震災以前は取引先を絞るのがトレンドだった。

 1社購買に向けて取引先を絞ろうとすると、現場では様々なトラブルが頻出した。簡単にいえば、“切られた”取引先の憤慨だ。下請け事業者との下請け取引を巡っては、下請振興法ならびに振興基準にこう記されている。

親事業者は、継続的な取引関係を有する下請事業者との取引関係を停止し、又は大幅に取引を減少しようとする場合には、下請事業者の経営に著しい影響を与えないよう配慮し、相当の猶予期間をもって予告すること。

 そこで、下請け事業者との取引か否かにかかわらず、仮に取引先が大企業であっても、取引停止を通知することにした。とはいえ、取引の停止や縮小を宣言された側からすると、心穏やかではない。

 さらに問題は、完全に取引量がゼロになるならまだしも、一部の取引については継続していたことである。製造業に勤めている読者なら分かると思うが、無数の調達品を代替品に切り替えるのは並大抵のことではない。もっといえば、無理だ。補修品などはゾンビのように生き続ける。

 そこで、取引先の代表者から浴びせられたのが冒頭の言葉だった。メインの製品を他社に切り替えるだと? 良い度胸だ。それなら、他の製品も納入を止めてやる。そんな心情だったのだろうか。

 これは契約うんぬんの話ではない。感情の話だ。本来なら契約の残った調達品を勝手に止めるなどできない。ただし、私は、これらの度重なる経験から、不必要な排除宣言はしない方がよいと思っている。将来、排除した取引先の技術が必要となってくる場合もある。

 だから、全く凡庸な結論なのだが、いつでも門戸を開きつつ、うまく調達するのがよいと信じている。

中国製排除宣言

 これから取り上げる事例は、私の経験談とは異なるレベルにあると理解している。理解した上でなお、調達の観点から意見を述べる。

 先日、海上保安庁が中国製ドローンの調達を2020年から見送る方針である旨が報じられた。現在、監視に利用しているものだ。数量は多くなく、数十機にすぎないものの、今後はそれを他国製に切り替える。情報が、ドローンを通じて、漏洩してしまうのを懸念した。排除対象となるメーカーは、中国の大疆創新科技(DJI)を指しているとみられる。

 ドローン大量生産国の中国を排除するとなれば、価格面で同レベルの製品を調達するのは難しくなるだろう。私は、いわゆる漏洩問題、つまりバックドアの存在は疑わしく思っている。もちろん、その可能性はゼロではない。そのために排除するというのも1つの手なのかもしれない。そもそも可能性がゼロと言い切れるものは、この世に多くはないが。

 中国製の排除については、華為技術(ファーウェイ)に対する処置が広く知られている。私もあちこちで書いてきたので、同社の話題は繰り返さない。それ以外に、米国では一部の都市で比亜迪(BYD)の排除が始まった。同社は電気バスを生産しているが、その供給にストップがかけられた。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
有料会員と登録会員の違い