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 成長途上にある東南アジアは決して攻略が簡単な市場ではない。先進国のグローバル企業でも手こずる東南アジアで新興のデジタル企業であるグラブが成功を収めている背景には、「ハイパーローカル」や「スーパーアプリ」と呼ぶ同社独自のユニークな戦略があった。

グラブの素顔3
東南アジアに徹底して「現地化」

 「東南アジアは多くの国からなり、それぞれ異なるニーズがある。域内最大の市場であるインドネシアですら、そこだけでは十分に大きいとは言えない」。グラブ共同創業者のタン・フイリン氏はそう指摘する。そこでグラブは最初から東南アジア全体に通用するシステムを作って、それを現地化する戦略をとった。名付けて「ハイパーローカル(地域密着)アプローチ」である。

 グラブで配車を予約すると、運転手との間でインスタントメッセージのやり取りができる。「グラブチャット」という機能だが、これには自動翻訳機能が搭載されている。出張や出稼ぎなどで東南アジア全域を行き来する人は多い。母国語しか話せなくても各国でサービスを利用できるようにした。

 グラブのアプリは国境線を越えようとも同じものが使えるが、サービスの中身は国や都市によって異なる。例えば三輪の「トゥクトゥク」のライドシェアは、三輪タクシーが一般的なバンコクやカンボジアなどでのみ提供している。

 顧客の声を聞くこともハイパーローカルアプローチの重要なピースだ。フードデリバリーのグラブフードはインドネシアの顧客の声から生まれた。車の配車を頼む顧客の多くが運転手に電話して「あのレストランに行って食事を持ってきてほしい」と頼んだことから、2016年5月にジャカルタでサービスを始めた。

 現在グラブフードのヘッドを務めるトマソ・ロドリゲス氏は1年半前までウーバーのフードデリバリー部門である「ウーバーイーツ」でアジア太平洋地域のヘッドを務めていた。グラブに転じた数カ月後に、グラブがウーバーの東南アジア事業を買収した。グラブに転じた時には「買収の噂があったが認識していなかった」という。だが、ウーバーイーツが擁していた多くのスタッフや配達人などを引き継ぎ、グラブフードの事業拡大につなげた。

グラブフードのヘッド、トマソ・ロドリゲス氏。前職はウーバー・イーツのアジア太平洋地域の責任者だ
グラブフードのヘッド、トマソ・ロドリゲス氏。前職はウーバー・イーツのアジア太平洋地域の責任者だ
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