Biki やりたくないんだよね。不確実性が高い新規の提案に巻き込まれたくない。自己保身のために次から次に「止めるため」のコメントを出してくる。一見、まともに聞こえるコメントや質問を。
井野辺 そーかあ。次から次にかあ。それはそれでケチつけコメントスキルが高いですね。嫌みですけど。
Biki 残念ながら、そういうケチつけコメントを学べる機会は会社に多い。ある年齢になるまでに、提案が潰される場に同席することは多々あって、そこで自己保身にたけた先輩のケチつけコメントを学んでしまう。そしてそれをそのまま使ってしまう。
井野辺 悲しいですね。
Biki ケチつけコメントだけして、「じゃどうすればいいか」を一緒に考えられない人は、まず間違いなく「実は実際には新たなことの挑戦をやったことがない人」。つまり野球の外野からのヤジと変わらない。
井野辺 ヤジとは違って、実際に提案を止める力がある分だけ面倒ですね。
Biki そうだなあ。確かに面倒だ。
井野辺 提案を実行に移すためには、ケチつけかもしれないけれど乗り越えないといけないですよね。どうすれば…。
トラタヌストーリーを作って
Biki 新規事業は不確実性の固まり。だから正確な売り上げ予測なんてできるはずがない。予測できるのはポテンシャル。大きな市場を想定して、その想定を数字として使って売り上げのポテンシャルをとりあえず出すしかない。その際、さっきも少し言ったけれど、最初に参入する事業だけでは市場が小さいことが多いので、その次に海外進出をするとか、商品やサービスの拡大をして対象市場を広げるとか、フェーズ2、3の「絵」を描かなくてはいけない。
井野辺 夢を描く、ということですか。
Biki まあ、「夢」でもいいのだけど、上司や周りを説得するための「トラタヌストーリー」だな。
井野辺 トラタヌ、取らぬ狸(たぬき)の皮算用…。
Biki なんせ不確実だからね。
井野辺 トラタヌで上司を説得できるものでしょうか?
Biki どうやっても新しいことなんてやりたくない上司だったら無駄かもね。でも、そんなタイプの上司でも人間だから変わることもある。
井野辺 どうすれば…。
Biki まず目をキラキラさせる。
井野辺 はあ?
Biki トラタヌと分かりながら作るストーリーだから、提案者自身も信じきれない。でも、あたかも信じきっているように「目をキラキラ」させて「この事業はこうなってこうなって、10年後にはこんな売り上げの事業に成長します!」と言いきるんだ。
井野辺 バレバレじゃないですか。
Biki そう。実は上司だって、トラタヌで「そんなにうまくいくはずない」と分かっている。でも、その「キラキラ」とやる気に押されて「少し付き合ってみるか」と思うようになることがある。そういう人は結構いる。「絶対この上司は分かってくれるはずがない」と決めつけないことだ。
井野辺 そんなにうまくいくかなあ。