
数年前までリコーに長年勤め、新規事業開発センター副所長や未来技術総合研究センター所長を歴任。現在はベンチャーから大企業まで幅広く新規事業のメンターや若手育成研修などを行っている。

大企業に勤める元エンジニア。入社10年目。現在は新規事業の立ち上げを行っている。
[♪オープニングの音楽♪]
Biki 深々とした夜の闇に心を休める時、いかがお過ごしでしょうか。大企業の中でいろんな壁にとらわれてモヤモヤしている若いアナタの背中を押す「ラジオ風コラム」の時間です。お相手は私Bikiおじさんと…。
井野辺 ふー…。
Biki どうした?井野辺くん。
井野辺 いえ、このラジオ風コラムのテーマである「社内の壁」にモロにぶつかっていて…。ま、私の相談の時間ではないので、とりあえず今日のカードを選びますね。よく切って…。コレで。2次元コードを読み込ませて再生しますね。ふー…。
(カードを読み込んで再生された動画)社内で出口が見つからずあがいていた技術を使って新規事業アイデアを作って、社内の新規事業支援プロセスに応募したら、合格して、張り切って進めているのですが…。事務局が準備したプロセスやルールがあまりに厳密かつ複雑で、それに対応しているだけでエネルギーが吸い取られてしまって、本来チャレンジしなければいけない事業化の活動が不十分になってしまってモヤモヤして疲れています。
井野辺 あー、私がぶつかっているのと全く同じ壁…。
Biki もしかしたら、井野辺くんじゃないの? 後ろ向きの頭が映っているけど。カツラ?
井野辺 いえ、違いますよ。でもそれにしても同じだなあ。
Biki それだけこの手の「社内のルール・プロセスの壁」はあちこちにあるということだろうね。
井野辺 うちの会社もいっぱいあります。
Biki ルールとかプロセスを作るのが好きな人っていっぱいいるからね。
井野辺 「好き」なのですか?
Biki それが仕事だと思っているし。
井野辺 本当の仕事は「事業を成功させること」じゃないのですか?
Biki ピンポーン! その通り。でも、残念ながら、自分で新規事業とかやったことがない人が、新規事業を支援しようとすると、すぐに「ルールやプロセス」を作ることに注力しちゃう。
井野辺 「新規事業の作り方」とかの本を読んだりして…。
Biki それと、アホみたいな高額のお金をコンサルティング会社に払ったりして。
井野辺 迷惑だなあ、そういうのって。なぜルールやプロセスを作りたがるのでしょうね。
自分で手を動かしていないから“本末転倒”をやる人たち
Biki 自分で事業アイデアを考えたり、事業に必要な技術を開発したり、社外との関係を作って新たな販路を築いたりするよりは、ルールとかプロセスを作る方が本とかコンサルに頼ると簡単にできちゃうからじゃないかな。そして、なんか「それなり」の格好がつく。
井野辺 なんでルールとかプロセスとかがあるんだろう。
Biki これも当たり前のことだけど、「成功確率を高めるため」。変なことをして事業が止まったり、時間を無駄に使ったりしないために本来はルールやプロセスはあるものです。
井野辺 でも、実際に新規事業の立ち上げをやっている私たちからみると足を引っ張っているとしか思えない。なのでモヤモヤして…。
Biki ほんと、多くの会社のルールやプロセスは本来の目的と逆の効果しか出してない。それはさっきも言ったけれど、「実際にはやったことがない人」が作っている、というのも大きな原因。
井野辺 頭だけで考えている、と。
Biki そう。そして、「事なかれ精神」がベースになっている。分かりやすいのは、「海外出張規定」とか「管理職規定」とか「海外駐在規定」とか。海外出張をしたことがない人間が「海外出張ルール」を作ると、あり得ない宿泊費規定を作ったり、無理な領収書を要求したりする。私がインドによく行っていたときも、トゥクトゥク(バイクで動くタクシー)でも領収書が必要と言われたりして、手書きの誰も読めないメモみたいな領収書を無理やり運転手に作ってもらった。堂々とこのメモを領収書として申請したら経理のやつらからは文句は出なかったけどね。
井野辺 ハハハ。管理職規定や海外駐在規定もそんな感じですか?
Biki 管理職規定なんかも管理職をやったことがないやつらが作っているから、たくさん「ありもしない机上の空論」みたいなもので満ちあふれている。1つひとつの事例は忘れちゃったけど、「なんじゃコレ、アホちゃうか!」ってしょっちゅう思っていた。
井野辺 忘れちゃったのですか。
Biki もともと気にしていなかったからか記憶にない(居直り!)。