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とにかく始めるために

井野辺 じゃあ、金額の目安は?

Biki これも内容によるけど、最初のステップだったら50万円もあれば何とかなる場合が多い。「リーン」、つまり「軽く」やるのがポイントだから、何を検証したいのかをはっきりさせて、それを検証するためにはどういう工夫をするかに知恵を絞ること。時々、やたらとお金をかけてやろうとする人もいるけれど、このステージでは「ニセモノのプロトタイプ」でもできることが多い。

井野辺 ニセモノですか?

Biki 機能を省いたり、「AIを活用」などと言っておきながら実は背後で人間が処理したりとか、そういうこと。仮説を検証するのが目的だから、最終的な製品に近くなくてもいい。知恵の勝負だね。大企業だったら、会社の実験設備を使ったり、ちょっとした材料や部品を活用させてもらったり。これぐらいだったらお金や場を用意できないダメ上司でも許してくれることも多い。

井野辺 出張とかも工夫して安くできそうですね。

Biki そう。会社で契約している旅行業者は高い場合が多いから、自分でネットの最安値チケットを手配するとか。文句を言うやからもいるけれど、そこはニコニコしながらうまく説得する。

井野辺 そうして短期間でお金をかからない最初のマイルストーンまでの計画を立てられたとして、どうやってお金を手に入れれば…。少額といっても数十万円となるとそれなりの金額ですよね。

Biki 頼る。たかる。

井野辺 その2つは、響きは似ていますけど…。

Biki 基本、「ダメ元」でいいからそれなりの立場の人に相談して頼ってみること。1、2回相談するだけで、すぐにお金が手に入ることはないよな、と覚悟を決めながらめげずにあれこれ何度も。ちなみに、シリコンバレーのベンチャーもVCから投資を受けるまでに30回以上VCに会って説明するのは当たり前だそうです。

井野辺 でも、「予算は他でもう決まっているし、自由になる金をポケットマネーのように持っている人はいない」のが現状では?

Biki ダメ元であちこちに話すと、「それなら、最近社内で始まったコンテストに応募してみたら」とか「新設のイノベーション推進部に予算枠があるようだから話してみたら」とか、あと度量の大きなマネージャーだったら「ウチのテーマがちょっと近いからその予算から少し調達してみよう」みたいな話が転がり込みます。動かなければ何も入ってこない。

井野辺 確かに日々の仕事をこなしているだけだと、社内の新しい動きは知りようがないですからね。

Biki あとは社外から調達してくる。助成金を申請したり、ビジネスコンテストに出て賞金を得たり、社内ルールのチェックは必要だけどクラウドファンディングでお金を集めたり。

井野辺 最近ウチの会社でも許可された副業も活用できるかもしれません。

Biki いい時代になったね。ただし、私の時代は副業が一般的でなかったからどう活用すればいいかはよく分からないな。

井野辺 それも知恵を絞って工夫してみます!

[♪エンディングの音楽♪]

瀬川秀樹のミニ解説

・お金を何とかするのはマネージャーとして大事な「場づくり」の1つ。面倒見が良さそうでもお金を工面しようとしないマネージャーはニセモノ
・新規事業に本気でチャレンジするのであれば、何に使うか分からない予算枠を準備するのが理想
・新規事業で必要なお金は年度で考えない。次のマイルストーンまでの単位で考える
・知恵を絞ってお金はケチる。そして早く動き次にやることを明確にする
・とにかくいろいろな人と相談してお金の在りかを探る。社外にも目を向ける

*このコラムはフィクションであり、実在する会社・社員とは関係ありません