ちっちゃいおっさんで賭けをする
Biki 昔、直接の上司じゃないけど、人間が小さくて、細かくて、すぐにキレル人がいて、その人に私の部下がお願い事をしにいかなければならないという状況がありました。部下が「どうすれば良いでしょう」と相談に来た。
井野辺 「呆れなさい」ですか?
Biki それも言ったかもしれないけど、その人はキレルと唇が震えて机をたたく癖があったので、それを活用してみた。
井野辺 活用?
Biki 話している間に「唇が震えるか」「机を何回たたくか」を部下と賭けたんだ。
井野辺 何じゃそりゃ…。
Biki それで、話が終わって帰ってきた部下に「どうだった?」と聞いたら、「やっぱり唇が震え出して、机を5回たたきました! Bikiさんは3回に賭けていましたよね。ボクの勝ち!」って喜んでいた。それでコーヒーをおごった。
井野辺 完全にちっちゃなおっさんを乗り越えていますね。
Biki キレルのは人間としての器が小さい証拠。すぐにあふれ出してしまう。どうしてそういう人間になっちゃったのかは分からないけど。
井野辺 本人も覚えていないようなことが原因かもしれませんね。
Biki だから「かわいそうな人」とも思う。とにかく、そういうふうに見れば「ちっちゃなおっさん」のちっちゃな世界にとらわれなくて済む。
井野辺 ある意味つまらないレベルに合わせずに上から目線で見る、ということかな。
Biki そんな感じだね。
マイクロマネジメントはマネジメントではない
井野辺 キレルのは人間が小さいというのは分かるし、そんなのまともに相手しない方が良いのも分かります。とはいえ、キレルほどではないけど細かい指示ばかり出すちっちゃな上司も面倒臭いなあ。
Biki いわゆる「マイクロマネジメント」ね。
井野辺 そういう言葉があるのですね。
Biki 重箱の隅ばかりつついてくるような。
井野辺 それがマネージャーの仕事と思っているのかなあ。
Biki そうだろうね。そういう人は「マネジメント」というのは「コントロール」だと思っている。
井野辺 確かに改めて「マネジメントって何?」と問われると、コントロールに近いような気もします。
Biki 私は、マネジメントというのは「やりくり」だと思う。あるゴールがあって、それを達成するためにリソース、つまりメンバーや予算、時間などをどう組み合わせて活用すれば良いかをやりくりすることが「マネジメント」だと思う。リソースは無限ではないからね。
井野辺 やりくりですか…。コントロールというと部下の一人の一挙手一投足にあれこれ口出しする感じがするけれど、やりくりと言われると、個人ではなくチームだったり、予算の使い方の工夫だったり、いろいろ知恵が必要になりそうですね。
Biki そう。やりくりして何とかするのは大変なんだ。家計も同じ。
井野辺 でもなんとかせにゃあかんぜよ。…なんとなく坂本龍馬風に言ってみました。
Biki ちっちゃな人は、自分が知っている狭いパターンに部下を押し込めて、コントロールしようとする。ちっちゃいので、ややこしいやりくりはできないし、やりたくない。だからマイクロマネジメントに傾倒してしまう。
井野辺 ちっちゃい人が知っている狭いパターンにこだわられるのはイヤだなあ。
Biki そうだね。新規事業創出など不確実性が高い仕事だと、やりくりしようにもそもそもリソースが無い場合も多い。予算も無い、メンバーも無い。そうするとマネージャーの仕事は「やりくり」のリソースを確保するところからやらないといけない。
井野辺 また一段と難しいですね。
Biki そうすると、細かいことにばかり時間を使っているヒマも無いはず。本来、マイクロマネジメントなんてやってられないはずだ。
井野辺 にもかかわらず、そういうちっちゃなことしかできないのはマネージャーとして失格ですね。
Biki 失格。