全3590文字

USBを介した給電の標準規格がある

 ここでUSBによる充電の仕組みをおさらいしよう。

 充電に必要な電力(W)は、電圧(V)と電流(A)をかけた値だ。どちらかが大きくなれば電力が増えるため、その分充電時間が短くなる。ただし、USBの規格で電圧は5V(誤差はプラスマイナス5%)、電流はUSB 2.0が0.5A(500mA)以下、USB 3.0が0.9A(900mA)以下と定められている。つまり電力は、電圧を5Vとすると、USB 2.0で2.5W、USB 3.0で4.5Wとなる。

 USBの電圧は、互換性を保つために簡単に変えられないので、電力を増やしたければ電流を増やすしかない。USB PDは、この課題を解決した規格で、USB規格を総括する組織「USB Implementers Forum(USB-IF)」が策定した。USBの電圧を最大20V、電流を最大5Aまで拡張し、1つのUSB Type-Cポートから最大100Wまでの電力の受給電ができるというUSBの電力規格である。これによりノートPCやタブレットなど、従来のUSBポートの電力で充電できなかった機器の充電が可能になった。

 ちなみに「Quick Charge」は米クアルコム(Qualcomm)が策定した独自規格である。接続機器を判別し、この規格に対応している機器なら、電圧や電流を上げて電力を増やして急速充電をする。

 話をUSB PDに戻そう。USB PDでは「パワールール」という電力供給のルールを定めている。USB PDのRevision 3.0では、USB Type-Cポートを使うときに限り、従来の電圧である5V以外に9V、15V、20Vといった高電圧も出力できるとしている。モバイルPCやタブレットなどの受電側が要求し、給電側(つまり電源アダプター)が対応していれば、充電時の電圧を引き上げて電力を増やす仕組みだ。従来のUSBとの互換性が保たれており、USB PDに対応しない機器を接続したときは従来通り5Vが給電される。

USB PDのパワールールで定められた電力と、電圧と電流(最大)を表に示した。機器によって対応パワールールが異なる
USB PDのパワールールで定められた電力と、電圧と電流(最大)を表に示した。機器によって対応パワールールが異なる
[画像のクリックで拡大表示]

 USB PDは、ケーブルによって流せる電流も異なる。一般的なUSB Type-Cケーブルは3Aまでだが、「eMarker」と呼ぶ認識チップを搭載するケーブルなら最大5Aまで流せる。eMarkerは、ケーブルの仕様や製造者などを機器に情報として提供し、機器はそれに合わせてパワールールに沿った電圧や電流を供給する仕組みだ。

 USB Type-Cケーブルの規格で、USB 3.1以降に対応するケーブルはeMarkerの搭載が義務付けられている。ただし、eMarkerを搭載しつつ、データ通信がUSB 2.0にしか対応しないというケーブルも存在するので注意が必要だ。また、USB PDのパワールールで、3Aより大きい電流を必要とするのは60W超、100W以下のときのみとされている。60W以下の機器を充電するときは必須ではない。

USB Type-Cケーブルを選ぶときは、eMarkerの有無に注目する。USB 3.1以上対応をうたうケーブルは規格で義務付けられており搭載している。写真はeMarkerチップを搭載した「UPD-210/BK」(ミヨシ)。実勢価格は税別1240円
USB Type-Cケーブルを選ぶときは、eMarkerの有無に注目する。USB 3.1以上対応をうたうケーブルは規格で義務付けられており搭載している。写真はeMarkerチップを搭載した「UPD-210/BK」(ミヨシ)。実勢価格は税別1240円
[画像のクリックで拡大表示]