国土交通省がCIMの基準やルールの整備を加速していることで、受発注者ともにCIMに取り組みやすい環境が整ってきた。しかし、国交省が2025年に直轄事業でCIMを原則化するには、まだ乗り越えなければならないハードルが多い。
最大の課題は、中小の建設会社への普及だ。CIMに関するハードやソフトなどへの投資負担が重く、導入をためらう企業も少なくない。
日本建設情報総合センター(JACIC)が2017年に建設関連8団体の所属企業に実施したアンケートでは、CIM関連のハードとソフトそれぞれへの年間投資額はいずれも平均350万円程度。技術者の育成に関わる費用は約150万円。それら人と設備への投資額を単純に足し合わせると、約850万円に達する。
中小の建設会社の間では、国交省のCIM普及への本気度を疑い、「この先、CIMがどうなるか分からない。頓挫(とんざ)する可能性もある」と冷ややかにみる向きもある。そうしたなかで、年1000万円近くの投資には動きにくいのが実情だ。
CIMへの投資は現時点で、リターンの少ない先行投資の色合いが濃い。CIMの導入効果が見えにくいことも、中小の建設会社が投資に二の足を踏む大きな要因となっている。
国交省は、CIMの導入効果として、作業のミスや手戻りの削減による生産効率の向上を挙げる。しかし、自らも認めているように、「削減効果の定量的な把握は難しい」(技術調査課)。
加えて、建設業界では「効果を享受できるのは次の段階」との見方が強い。例えば、施工段階で作成・更新した3次元モデルや属性情報(材料や仕様など)を活用して作業を効率化できるのは、点検や修繕などの維持管理の段階とみられている。