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クラウドで「データの民主化」を

 上記のヘルステック・スタートアップの強みは、大量のデータをセキュアに保管しながら、AIなども用いつつ短期間にデータ解析することで、医療機関や患者に価値の高いサービスを提供したり、自社の業務効率を改善したりしていることだ。そのためにクラウドを有効に活用している。スタートアップ企業だけでなく、海外のヘルスケア・ライフサイエンス業界では大企業や大規模医療機関、研究機関、行政機関に至るまで、クラウド活用が当たり前になっている。

 クラウド活用の利点は、初期費用なしに仮想マシンを簡単・迅速に立ち上げることができ、従量制で運用コストに無駄がないことが挙げられる。またコンピュータ環境やデータストレージを必要に応じて拡大でき、必要がなくなれば使用を停止できる柔軟性も備えている。

サイジング不要となるリソーススケールの容易さ(出所:アマゾン ウェブ サービス)
サイジング不要となるリソーススケールの容易さ(出所:アマゾン ウェブ サービス)
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 米国政府は、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令「HIPAA:Health Insurance Portability and Accountability Act」で、その対象となる事業体とその取引先が、安全なクラウド環境を活用して、保護された医療情報(PHI:Protected Health Information)を処理、管理、および保存できるように定めている。

 日本でも、2010年2月に民間事業者の運営するデータセンターによる外部保存、いわゆるクラウドへの保存が容認され、日本のヘルスケア業界でも、今後クラウド活用の推進が期待される。

 クラウドでデータを管理し分析することで、これまで日本のヘルスケア業界の課題だった「データの民主化」が可能になる。行政や医療機関のデータは、病院や各種団体、さらには部門別にデータが分かれた「クローズドな情報」で十分に活用できていない。政府関連団体が情報のプラットフォームを作り、様々な医療機関からデータを収集しクラウド上に蓄積することで、全国規模のデータを有効活用できるようになるだろう。人材不足などの医療業界の抱える課題の解決にもつながる。

 次回からは、海外のヘルステック・スタートアップについて、その革新的なサービスやビジネスモデルを詳しく解説するとともに、その背景にあるクラウドなどの技術の活用手法を紹介していく。

■変更履歴
当初、2ページ目の第5パラグラフで「保健医療制度」と記載していましたが、正しくは「医療保険制度」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです