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 スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシアが国境を接するスカンジナビア半島の付け根部分はラップランドと呼ばれ、先住民族(サーミ)のトナカイの遊牧エリアとして知られている。北極圏に位置しているため白夜と常夜があり自然環境はかなり厳しい。

 スウェーデン最北の街、キルナ(KIRUNA)は産出する鉄鉱石とともに経済発展を遂げてきた人口約2万3000人の鉱山都市である。2018年まで連載していた「武藤聖一の欧州『最新建築』撮り歩記」第150回「鉱山優先で移転を決めた白夜の街へ」で、1度訪れた街だ。市庁舎を中心とし、学校、病院、商業施設、住宅などを含む、とてつもなく巨大な移転プロジェクトが現在進行している。

2018年11月に竣工したスウェーデン・キルナ市の新市庁舎。金色のアルミプレートで覆ったアトリウムの空間中心部を見上げる(写真:武藤 聖一)
2018年11月に竣工したスウェーデン・キルナ市の新市庁舎。金色のアルミプレートで覆ったアトリウムの空間中心部を見上げる(写真:武藤 聖一)
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 その街で国営企業のLKAB(エルコーアーベー)社は、ある大胆な予測を立てた。地表から1356m下へ斜めに延びる鉱山の立坑が21世紀中に既存の街を崩壊させるというものだった。LKAB社は06年、事業の効率性を確保するため地下掘削継続の計画案をまとめ、市民生活の安全を考慮して街を移転する案を市に提出。議論の末にキルナ議会は11年にこれを承認し、33年までに市の中心部から東3km離れた場所への移転を完了する計画を決議した。

左に写るのが、移築した時計塔。遠くに街と鉱山が見える。過去から現在そして未来の発展を励まそうとする庁舎移転のポイントとなった場所だ(写真:武藤 聖一)
左に写るのが、移築した時計塔。遠くに街と鉱山が見える。過去から現在そして未来の発展を励まそうとする庁舎移転のポイントとなった場所だ(写真:武藤 聖一)
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2014年に撮影した建て替え前の市庁舎。1962年に建設された(写真:武藤 聖一)
2014年に撮影した建て替え前の市庁舎。1962年に建設された(写真:武藤 聖一)
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 計画の中心となる市庁舎の国際コンペが行われたのは12年。56組のエントリーからデンマークに本拠地を置くHenning Larsen Architects(ヘニング・ラーセン・アーキテクツ)の案が選ばれ、14年に工事が始まった。

 当時の基礎工事の様子をリポートしたこともあり、庁舎や事務所の移転と周辺整備がほぼ完了したというので19年秋、5年ぶりに現地を訪れた。

 新市庁舎「KIRUNA CITY HALL」は、CRYSTAL(クリスタル)という愛称で呼ばれている。建物は地下1階・地上7階建て、高さ34m、延べ面積1万3400m2の建物である。街の下にある鉄鉱石にインスピレーションを得て、金色の立方体を核とし、その周りを円形リングがぐるりと囲むイメージで設計された。

キルナのシンボルであった1958年建造の旧市庁舎の時計塔は新庁舎前に移築された(写真:武藤 聖一)
キルナのシンボルであった1958年建造の旧市庁舎の時計塔は新庁舎前に移築された(写真:武藤 聖一)
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 キルナの冬は長く、雪が建物周辺に堆積するのを避けるため、建物を円形にして雪を風で飛ばす効果を狙ったという。移転前の旧市庁舎で1958年に制作され、街のシンボルとなっていた時計塔(鐘楼)もバス停近くに移築されている。

1階平面図(資料:Henning Larsen Architects)
1階平面図(資料:Henning Larsen Architects)
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5階平面図(資料:Henning Larsen Architects)
5階平面図(資料:Henning Larsen Architects)
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断面図(資料:Henning Larsen Architects)
断面図(資料:Henning Larsen Architects)
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