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 産業機器の「データ交換標準」をうたうOPC UA(OPC Unified Archiecture)は、2008年の登場から10年以上がたつ。そのコンセプトは、機器ごとに業界共通の「情報モデル」を取り決めてデータを交換しやすくし、機器同士をあまねく接続することにある。生産ラインを複数メーカーの機器で構成するマルチベンダー化がますます進む中で、普及すればユーザーのメリットは大きい。

機器の「標準動作」も情報モデルで定義する

 共通の情報モデルが増えるほどOPC UAは使いやすくなる。現在は射出成型機や食品包装機など、比較的大きな装置の分野で情報モデルの策定が進んでいる。日本OPC協議会で普及部会部会長を務める岡 実氏は「将来はバルブやモーターといった、より小さな部品単位で情報モデルの策定が進むだろう」と期待する。

 OPC UAの情報モデルは大きく3つの要素から成る(図1)。情報モデルのデータ構造(構造体)が持つ「変数」、機器の標準的な制御手順である「メソッド」、異常時にアラームを出力するといった動作を指定する「イベント」である。

図1 オブジェクト指向による「情報モデル」の表現
図1 オブジェクト指向による「情報モデル」の表現
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 カメラを例にとって考えてみよう。何らかのきっかけ(トリガー)を基に画像を撮影して指定した場所に送信する、という一連の動作が「メソッド」に、画像データやメタデータが変数に当たる。「メソッドが定義されていれば、どのメーカーのカメラでも、同じ動作指示を与えて同じ形式のデータを取得できる」(たけびしシステムソリューション開発部長の石田匠氏)。

 他分野に先駆けてOPC UAの情報モデル策定に取り組んでいるのがPLC(Programmable Logic Controller)業界だ。2010年、効率的なPLCアプリケーション開発の普及を目的とする業界団体「PLCopen」は、OPC UAの情報モデルを取り決めた「コンパニオン仕様」を公開した。同仕様に従えば、ユーザーは特定のPLCベンダーに依存することなく、データをMES(製造実行システム)などの上位システムに渡せる。

 PLCは生産ラインの制御だけでなく、産業機器の内部に組み込まれている場合もある。異なるベンダーのPLCを内蔵する産業機器を組み合わせて使おうとすると、従来は改造や擦り合わせが必要だった。しかし、OPC UAがあればその手間を減らせる。例えば、米国では包装機器の業界団体がPLCopenと協力して標準の情報モデル策定に取り組んでいる。

 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)は、PLCopenの成果を利用してFA機器を制御する研究を進めている。IoT(Internet of Things)技術の導入支援を望む中小企業に対して情報を提供するのが目的だ。ロボットによる搬送ラインを模したテストベッドをPLCopenと共同で開発。その成果を公表している(図2)。

 PLCopenはOPC UAのクライアント機能を「ファンクションブロック(FB)」としてPLCに実装するための仕様を規定している。FBはPLCにおける複数の処理を組み合わせて部品化したものだ。KISTECはFBを実装しているPLCを用いて、そのFBを活用する場合の効率的なプログラミングの考察および動作検証を行った。

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図2 搬送ラインを模したOPC UAのテストベッド
図2 搬送ラインを模したOPC UAのテストベッド
OPC UAの機能を検証するために構築した。OPC UAのサーバ機能はスカラロボットを制御するマイコン(Raspberry Piを使用)に、クライアント機能はベルトコンベヤーとインデックステーブルを制御するPLCに置く。PLCが送るロボットの動作コマンドをRaspberry Piが受け取る。稼働状況はPCから確認できる。上図の青線はEthernetによるOPC UAの通信を、赤線はPLCのI/O接続を、緑線はRaspberry PiとロボットのUSB接続を示している。
(上図出所:神奈川県立産業技術総合研究所、下写真:日経 xTECH)
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