VR(仮想現実)・AR(拡張現実)の関連市場は企業用途がけん引し、2023年には世界で17兆円を超える。ただし新技術ということもあり、企業がVR・ARを使いこなすのは簡単ではない。多くの企業がつまずく3つの課題と対策を示す。
VRとARに関連する製品・サービスの市場規模は今後急拡大する見込みだ。
調査会社のIDC Japanは世界市場におけるVR・ARのハードウエアとソフトウエア、関連サービスを合計した支出額が2018年は89億ドル(1ドル108円換算で9612億円)だったと試算している。19年は168.5億ドル(同1兆8198億円)と2倍近くに伸び、23年には1606.5億ドル(同17兆3502億円)と18年比18倍に達すると予測する。18年から23年にかけての年間平均成長率(CAGR)は78.3%に上る。
VR・ARは従来のITとは異なるジャンルの新技術だけに、企業が導入する際には少なからず課題がある。VR・ARを含むデジタル変革(DX)分野のコンサルティングを手がける、アクセンチュアの廣澤篤デジタルコンサルティング本部プリンシパル・ディレクターによれば典型的な課題は3つある。
デバイスは発展途上
1つ目はヘッドマウントディスプレー(HMD)などVR・ARデバイスの性能や映像品質が発展途上であることだ。廣澤氏は「VR・ARシステムの利用者はCGの映画のような高精細な映像を期待しがちだ。だが今のデバイスでそういう期待に応えるのは難しい。用途やデバイスによっては業務に求められる最低限の画質を確保できないこともある」と指摘する。
VR・ARデバイスはモデルチェンジのたびに性能が向上しているので、将来的には解決されていくとみられる。しかしデバイスが成熟するのを待っていては活用を始められない。「解像度や視野角といったカタログ上のスペックだけではどこまで実用に堪えるのか分からないことも多い。早期に実証実験をして使用感を確かめるべきだ」(廣澤氏)。
導入の際は「建設現場で安全器具を使う重要性を作業員に認識してもらう」「生産ラインの組み立て作業を支援する」「店舗の商品棚の見栄えを臨場感ある形でシミュレーションする」といった目的を明確にする必要がある。その上でアジャイル的に開発と検証を繰り返し改善していく。