建設用の3Dプリンターで橋や住宅を造る――。海外ではそんな事例が散見され始めた。型枠を使わずに有機的な形状のセメント系構造物を製作できる3Dプリンター。建設現場を工場に変える力を持つだけでなく、これまで施工が難しかった新しい構造や形状を具現化する可能性も秘める。海外に比べて周回遅れとなっている日本でも、技術導入や開発の動きが出てきた。現状と展望に迫る。

建設用の3Dプリンターで橋や住宅を造る――。海外ではそんな事例が散見され始めた。型枠を使わずに有機的な形状のセメント系構造物を製作できる3Dプリンター。建設現場を工場に変える力を持つだけでなく、これまで施工が難しかった新しい構造や形状を具現化する可能性も秘める。海外に比べて周回遅れとなっている日本でも、技術導入や開発の動きが出てきた。現状と展望に迫る。
竹中工務店は、セメント系構造物そのものを造形するという視点とは別の考え方で、3Dプリンターを生かそうとしている。同社が着目したのは型枠だ。研究開発の端緒は、2014年に慶応義塾大学環境情報学部の田中浩也教授と共同で開発した「ArchiFAB」になる。
北海道苫小牧市に本社を置く會澤高圧コンクリートは、先進的な欧州のベンチャー企業との技術交流を契機に、建設用3Dプリンター(以下、3Dプリンター)の活用に乗り出した。同社が狙うのは、インドを舞台としたバイオトイレの普及事業だ。3Dプリンターでトイレのハウジングを建設する計画だ。
T-3DP は門型の建設用3Dプリンターだ。制御用パソコンで読み込んだ3次元データに基づいて、セメント系材料(モルタル)を1層当たり約1cmの厚さで押し出して積層・実体化する。ノズル部の移動速度は、最速毎秒50cmに達する。幅1.7m、長さ2m、高さ1.5mまでの建設部材を製作できる。
前田建設工業が2019年2月に行ったICI総合センターICIラボの開所式で、3Dプリンターによるデモンストレーションが参加者の目を引いた。当日は高さ2.8mの喫煙所のハウジングの造形を実演。1時間で1m程度の高さを積層できる能力を披露した。
サイズこそ小さいものの、建設用3Dプリンターで橋を製造した会社は日本にもある。大林組だ。同社は、セメント系材料を扱える3Dプリンター技術を開発。幅50cm、奥行き25cm、高さ50cmの円弧型のブロック部材を製作し、これを合計6つ組み上げて、アーチ橋を試作した。
コンクリート3Dプリンター研究の第一人者に聞く
コンクリート3Dプリンターで、橋や住宅などの大型構造物を建設するプロジェクトが進むオランダ。研究者として技術開発を率いるアイントホーフェン工科大学のテオ・サレット教授に、技術開発の状況と活用の見通しを聞いた。
コンクリートを”印刷”して今までにないデザインを形に
ものづくりのプロセスを抜本的に変える可能性を秘めた3Dプリンター。製造業を中心に、樹脂や金属を使った3Dプリンティング技術の活用が進む。一方、建設業が熱い視線を送るのが、コンクリートを“印刷”する技術だ。国を挙げた技術開発を進めてきたオランダでは、世界最長のコンクリート3Dプリンター橋が誕生しよう…
繊維大手のクラボウが、建設産業向けのコンクリート3Dプリンティングの事業化を検討している。2019年度内にも専用の機材を国内の工場に導入する方針で、意匠性の高い建物の外装材や景観材料など付加価値の高いコンクリート製品の領域で市場展開を狙う。