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 今回はまず、本連載で取り上げてきたテーマと関連して、日本経済団体連合会(経団連)会長の中西宏明氏の発言を紹介したい。同氏は、2020年1月16日に経済産業省が主催したセミナーで「Society5.0時代に求められるアーキテクチャの考え方」と題する講演を行った。その中で、「企業の経営層がアーキテクチャーの重要性をきちんと理解することが重要であり、さらにアーキテクチャーは会社で組織を作ったり、事業を設計したりするのと全く同じことだ」と指摘したと、日経クロステックが報じている。

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 経団連の現会長が、日本企業の経営層に向けてアーキテクチャー理解の重要性についてここまで踏み込んだ発言をするのは、驚くべきことである。アーキテクチャーとは、システム全体を俯瞰(ふかん)した上で、部分間のつなぎ方や全体と部分の関係に着眼する見方であり、思考枠組みである。現場の強みとそこからの積み上げを重視してきた日本企業にとって、なじみにくいところがあった。現場思考とアーキテクチャー思考は、思考の方向性が正反対といってもよいかもしれない。ここまで踏み込んだ発言をするというのは、現場の強みだけではやっていけない時代に突入したという経団連会長の危機意識の表れとも読める。

 アーキテクチャーについては既に多くの研究が世界中で展開されている。その詳細については別の機会に譲るが、初歩的な知識については拙著『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略』(光文社新書)をご覧いただきたい。本連載では、世界最強の日本工作機械産業の盛衰要因を探ってきたが、最終的には中西氏と同じく、製品アーキテクチャーの重要性という結論にたどり着いたのである。

EVと自動運転は互いに普及を後押し

 その上で、前回に続いて今回も製品アーキテクチャーの観点から自動車産業の潮流を探ってみたい。その観点に立つと、自動車産業における大きな潮流の1つとして、電気自動車(EV)技術と自動運転技術は共進化しながら、自動車産業の技術潮流を作っていくことが挙げられる。自動運転技術の進化がEVの普及を後押しするとともに、EVの普及も自動運転を後押しするという関係だ。

前回:脱エンジンの死角、EVでは売り上げも雇用も維持できない

 改めて自動運転の仕組みを簡単に確認しておこう。自動運転では、外部の様々な状況をセンシングして歩行者や車の状況を認識し、それに基づいて車の適応行動を判断する。そして、クルマ本体の駆動系に操舵(そうだ)やブレーキ、アクセルなどの制御指示を出すという一連の動作を高速で繰り返す。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)

 自動運転システムのアーキテクチャーは、大まかにクルマ本体および自動運転装置という2つのユニットで構成され、制御信号がユニット間を高速で通信することによって自動運転を実現している。そのため、センシング・認識・判断という一連の動作を担う自動運転装置側とクルマ本体との間では、正確かつ高速な信号のやり取りが必要になり、それが可能なインターフェースが要求される。自動運転には、簡易支援のレベル1から完全自動運転のレベル5まであるが、システムの基本構造は同じだ。同様に、駆動方式がエンジンでも電気モーターでも、アーキテクチャーの観点では変わらない。

 つまり、一口に自動運転車といっても、自動運転装置をエンジン車に搭載する場合と、EVに搭載する場合があるということだ。現在はエンジン車が主流なので、自動運転車もエンジン車が多い。しかし、EVが普及すれば自動運転車におけるEVの比率も高まってくる。