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 結論から述べよう。収益性を高めたいならば、日本企業はそろそろモジュラー設計にかじを切るべきだ。市場が全世界に広がる中、あまり費用をかけずに多様なニーズに応える製品をどう開発すれば良いのか。これが現在の日本企業の切実な経営課題である。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)

 一般に、欧米企業や韓国企業に比べて、日本企業はグローバル化に出遅れた感が否めない。グローバル化への対応はこれまで以上に重要な経営課題となっている。そのための鍵の1つが、「コスト競争力」と「多様なニーズへの対応」の二兎(にと)を追うモジュラー設計に転換することだ。

 日本企業は、生産プロセスのコスト削減と品質管理の両立には極めて熱心に取り組んできた。いわゆるトヨタ生産方式は、リーン生産方式として普遍化され、世界中の企業の手本とされてきた。だが、よく考えてほしい。設計と生産では、果たしてどちらがコスト削減に効果的だろうか。それは、もちろん設計だ。設計仕様が決まってから生産プロセスの改善でコストを削減しようとしても、その効果はたかが知れている。

 設計段階でコストに十分注意を払って設計することが、コスト競争力を持つ製品を作るには極めて重要である――。これは、私がかつてファナックのエンジニアをしていたとき、稲葉清右衛門名誉会長(当時は社長)によく言われたことだ。同社の研究所には、「少ない部品で設計せよ」という意味のドイツ語の標語が、建物のドアに掛かっている。少ない部品で設計すれば、本来両立させにくいコストと品質を両立させられる。これは、稲葉名誉会長が掲げた、極めて具体的かつ実践的な設計指針なのである。同社のエンジニアは、研究所の建物に出入りするたびにこの標語を目にして肝に銘ずることになる。

 ファナックの優れた収益性の背景には、このような設計段階での高いコスト意識がある。同社は、ややもすればロボットによる24時間完全無人化工場のような生産プロセスの自動化が注目されがちだが、収益の源泉を理解するにはそれだけでは十分ではない。

 裏を返せば、多くの日本企業は設計段階でのコスト競争力の“埋め込み”にあまり注意を払ってこなかったと見てよいだろう。それを正当化してきたのは「すり合わせ設計」という考え方である。これは、モジュラー設計とは対極的な考え方である。「すり合わせ設計こそが日本の製造業の強みだ」という認識が日本企業に刷り込まれてきたように思う。