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 こうして工作機械メーカーや最終ユーザーは、ファナックが提供するツールキットを使い、必要な応用ソフトを自由に作れるようになった。その狙いを、同社常務取締役FAセールス本部長(筆者インタビュー時)の岸甫氏は筆者に対して次のように語った。

 我々が工作機械を動かすための基本的なものを提供して、それぞれの工作機械メーカーさん独特の特徴を出すためには、工作機械メーカーさんの力で我々が提供する道具を使って機能を追加できるような、そういう機能をつけたらいいのではないか。要するに我々は道具だけを作ってあげましょうと、その道具立てを使って工作機械メーカーさん独自で色々考えられて特殊な機能を追加してくださいと。そうすれば、みかけは同じだけれども、A社さんの工作機械、B社さんの工作機械と、NC装置は同じであっても機能はそれぞれ特徴のあるものに変更できる

柴田友厚『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略』


 言い換えれば、それまでファナックが全て囲いこんでいたNCソフトウエアの一部を、工作機械メーカーに開放した。それによって、工作機械メーカーとファナックは、それぞれ独自に並行してNC装置に革新をもたらすことができるようになった。ファナックは、工作機械メーカーの多様な要求から解放されて、ハードウエアや基本ソフトなどのコア技術の革新に専念できるようになった。

 一方、工作機械メーカーは、ハードウエアや基本ソフトの変更に左右されることなく、独自の応用機能の実現に専念できるようになった。両者のインターフェースは、APIとしてのツールキット・モジュールによって適切に管理されており、インターフェースを守っている限り、互いに自由に開発を進められる。これこそがまさに、モジュラー化のメリットに他ならない。このメリットを最大限に生かし、多様なニーズに対してコストをかけずに対応していく仕組みをファナックは作り上げていったのである。

[参考文献]
柴田友厚、『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略―「工作機械産業」50年の革新史』、光文社新書、2019年.
柴田友厚(しばた・ともあつ)
東北大学大学院経済学研究科教授
1959年札幌市生まれ。博士(学術)。1983年京都大学理学部卒業。ファナック、笹川平和財団を経て、1998年筑波大学大学院MBA、2001年東京大学大学院博士課程修了。2004年香川大学教授。2011年4月から現職。「イノベーション論」担当。主要著作に『製品アーキテクチャの進化論』(白桃書房、2002年)、『日本企業のすり合わせ能力』(NTT出版、2012年)、『イノベーションの法則性』(中央経済社、2015年)、『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略―「工作機械産業」50年の革新史』(光文社新書、2019年)など。国内外の学術ジャーナルへの論文掲載多数。