「生粋のSEが富士通の社長に就任すると、なぜか営業とSEを統合した組織をつくる。黒川(博昭)社長の時もそうだった。だが、その7年後に営業出身の間塚(道義)会長が業種SEをSE子会社に出向させ、営業・SE統合組織を解体した。SE出身の時田(隆仁)社長が今回、9年ぶりに営業・SE統合組織を復活させる。果たしてどうなるか」
富士通でマーケティングを担当した元幹部は4月1日付の役員人事と組織改革の勘所をこう指摘した。営業部門とSE部門を統合し「グローバルソリューション部門」を新設する狙いを富士通は「営業とSEが同じ目標を共有し、一体となってお客様のグローバルなDXを推進するため」としている。
日本IBMで営業を担当した経験を持つ独立コンサルタントも営業・SE統合がポイントだと指摘。「マルチベンダー時代に希薄になった顧客と富士通の関係を再度強固にする方策だ」とみる。
変わってきた顧客の意識
オープンなクライアント/サーバーシステムが普及し、さらにパブリッククラウドの時代になった。顧客の現場が独自にシステムやクラウドの導入に走り出し、様々なソフト、ハード、サービスのベンダーが入り交じった。その結果、富士通は顧客を「うちの顧客」とは言えなくなり、顧客も「うちは富士通ユーザー」と言わなくなった。
日本IBM出身のコンサルタントは続ける。「時田社長も日本IBMの山口(明夫社長)も金融SEとして顧客にはりついて仕事をしてきた。共に顧客ファーストの考えが染みこんでいる。営業とSEの密な連携が顧客の望みだと気付いたのだろう」。顧客は信頼できるベンダーを選び、営業、SE、コンサルタントにかかわらず1人の担当者に相談したい。話せばすぐに組織として動いてくれることが望ましい。
企業の経営トップ自らがビジネス直結型システムやDX(デジタルトランスフォーメーション)を求め出したことから「富士通やIBMなどIT大手の立場が再度強まる流れもある」(日本IBM出身のコンサルタント)。「責任」がベンダー選択の重要指標になってきたからだ。顧客の経営トップからするとシステムの最終責任をどう取ってくれるのか、そこが決め手になってくる。