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 葛飾北斎の晩年の作品に「富嶽三十六景」より幅広いテーマを採り上げた「富嶽百景」がある。これを「富岳百京(富岳は京の百倍)」と読み替えたのがクレイ・ジャパン・インクの中野守社長。「富岳は幅広いソフトが動くArmアーキテクチャーと超高速メモリーの組み合わせで価値がある。販路さえあれば世界で売れる」と、可能性を示唆した。

 「富岳は京の100倍」は理化学研究所と富士通が目標値として述べていた。京は2011年にスパコンTOP500性能で10ペタFLOPS(フロップス、1秒当たり浮動小数点演算回数)を達成した。

 富岳は京と同様、米中の機先を制し「完成品の9割の状態」(富士通のスパコン関係者)で計測した結果をスパコンの国際専門家会議(ISC)に提出した。ISCは6月22日にランキングを公表。富岳は5つあるベンチマークのうち電力消費性能の「Green500」を除く4分野でトップを占めた。スパコン用途の全方位で性能を発揮できる証となった。

図 日米のスーパーコンピュータ開発状況
図 日米のスーパーコンピュータ開発状況
米国のプレエクサ/エクサ級5機種、HPE/Crayが総なめ(出所:筆者調べ)
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 「競合が直線道路を走る速さだけにとらわれてエクサ級の開発を進めていたとしたら、カーブでは富岳を抜けないかもしれない」と先の富士通スパコン関係者が例えを交えながら指摘した。

 しかしながらISC公開のデータを見ると「富岳百京」に疑問符が付く。性能が京の100倍に達していないのだ。「LINPACK/TOP500(標準性能指標)」で富岳は京の41倍、「HPCG(実アプリケーション性能に近い評価指標)」が22倍、「Graph500(ビッグデータ/分析処理性能の評価指標)」は2倍だ。

 100倍は偽りかと思われたが、「100倍はスパコンで実際に広く使われているアプリを走らせた上でのもの。机上でないところに富岳の実効性能を求めた」(富士通スパコン関係者)という。