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 「スーパーコンピューティングで日出ずる国が米国の力に屈した」。こんな見出しが2022年5月30日、海外の報道で踊った。ドイツのハンブルクで国際スーパーコンピューティング会議が開催され、スーパーコンピューターの処理性能ランキングTOP500の夏版が発表されたが、2020年から2年間の夏と冬、4連覇してきた日本の「富岳」(富士通)が首位を米国の「Frontier」(米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、HPE)に明け渡した。

 HPL(倍精度ハイパフォーマンスLINPACK)ベンチマークの結果、米AMD製CPU/GPUを使うFrontierは富岳の2.5倍となる1.102エクサFLOPS(フロップス、1秒当たり浮動小数点演算回数)を発揮、世界初のエクサFLOPS機と認められた。Frontierが設置されているオークリッジ国立研究所でチューニングを重ね、1エクサ超えを申請したのは発表の3日前だった。

エクサ級で張り合う米中

 ところが「首位奪回」を関係者は冷めた目で見ている。中国がすでに2台のエクサ級を稼働済みとの情報が出回っているからだ。TOP500発表直前に「中国は2025年までにエクサ級を10台稼働させる」と英フィナンシャル・タイムズが報じた。中国関連情報筋が「2026年に10エクサ級を1台稼働させる計画」と訂正した、という報道が続いた。にもかかわらず中国はTOP500にエクサ級を申請せず、10年ぶりに中国はベスト5に入らなかった。

 2010年以降、スーパーコンピューターの開発で米中は激しく競り合っている。直近のTOP500の内訳を見ると、中国設置が173台、米国設置が127台、500台トータルHPL性能4.40エクサFLOPSのうち米国が同2.08エクサFLOPS、中国が同0.53エクサFLOPS。両国だけで台数、性能ともにTOP500の6割を占めた。

 米中のエクサ級はそれぞれ3台の計画が明らかになっている。米国製については2021年7月22日号の本欄で既報した通りで、残る2台はアルゴンヌ国立研究所の「Aurora」(米インテル製CPU/GPUを利用、HPEが開発・製造)、ローレンス・リバモア国立研究所の「El Capitan」(AMD製CPU/GPUを利用、HPEが開発・製造)。