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 人材採用では就活生などの求職者に直接、不採用の理由を説明するケースはほとんどない。しかし仮に理由を聞かれれば「試験の点数が足りなかった」「○○の点で当社が求める人材像とは違った」などと説明できるはずだ。求職者が全員それで納得するわけではないだろうが、試験の解答や面接での言動が直接結果に結びついていれば、説得力は増す。

 将来起こり得る確率によって納得性の高い提案を示せるケースもある。例えば自動車保険だ。年齢条件により保険料に差を設けても、契約者は異を唱えない。「若い人ほど事故を起こすリスクが高い」との説明が、警察の統計など客観的な情報で裏打ちされているからだ。

 AIの判断やデータサイエンティストの分析だと、そうはいかない。誰も気づかなかった可能性を発見して判断に生かすことが眼目である以上、判断対象となる人にとっては初めて聞く話だ。不利益を被るならば受け入れ難い。社会的にも是認されないだろう。

 リクナビ問題の先には、こうしたデータ活用の新たな問題が控えている。AI活用などを検討する企業は、個人情報保護法を順守するだけでは不十分。むしろ分析結果を基に差異化したビジネスを展開する際の顧客に対する説明責任についても、十分に検討しておく必要がある。もちろん現場任せであってはならない。経営が検討すべき問題である。

木村 岳史(きむら・たけし)
木村 岳史(きむら・たけし) 編集委員。1989年日経BP入社。日経ネットビジネス副編集長を経て2010年に日経コンピュータ編集長。13年1月より現職。日経コンピュータと日経 xTECHにIT業界やIT部門の問題点を斬る辛口論評を執筆中。