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 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のトップ人事には驚かされた。次期社長の亀沢宏規副社長が理系人材だったからだ。同氏は東京大学大学院理学系修士課程の出身で、現在はデジタル事業を統括する。2020年4月にメガバンク初の「理系社長」が誕生する。

 FinTechベンチャーの成長などにより金融業のデジタルディスラプション(デジタルによる破壊)が現実のものとなりつつある。日本銀行の超低金利政策の影響で本業である融資業務はもうからないビジネスになり、店舗の維持コストなども重くのしかかる。そうした状況を打破するために、MUFGはデジタルに精通した理系社長を登板にさせ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を一気に加速させようとしているわけだ。

 このサプライズ人事に「時代の変わり目」を感じたIT関係者は多いはずだ。日本の多くの大企業には、文系と理系という暗黙の区分があった。文系とは経済学部や法学部、文系大学院などの出身者を指し、理系とは亀沢氏のような理学部や工学部、理系大学院などの出身者を意味する。日本の大企業は経営者の大半を文系出身者が占めてきた。

 最近でこそ製造業では、理系の出身者で研究者や技術者としてキャリアを積んだ人が経営者になるケースが増えてきている。だが銀行など金融機関は今日に至るまで、文系出身者を経営者にすえるのが当たり前だった。理系出身者はIT技術者など専門家として処遇され、経営者への道はこれまで閉ざされていた。

 だからこそ、MUFGの社長人事はまさに時代の変わり目を象徴する動きと言える。既に保険業界では、日本生命保険や東京海上ホールディングス、明治安田生命保険で理系出身者が社長に就いており、メガバンクにもついに理系出身のトップが誕生する。DXを推進するにはITやデジタルに強い経営者が主導する必要があることから考えると、これを機に業界を問わず理系出身の経営者が続々と登場する可能性がある。