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 多くの顧客を抱える大企業は既存の製品やサービスの改良に注力し、新興市場に目が向かない。新技術や画期的なアイデアで勝負する新興企業が将来、自社の脅威になる可能性があったとしても、当初は市場規模が小さく、彼らの製品やサービスが低機能なこことから過小評価してしまう。その結果、対応が遅れた大企業は急成長する新興企業によって、自社の事業をディスラプション(破壊)されていく――。

 21世紀になって多くの日本企業が陥った苦難の理由は、この文章でかなり説明できるだろう。2020年1月23日に死去したクレイトン・クリステンセン米ハーバード大学経営大学院教授の著書『イノベーションのジレンマ』で示された内容を要約したものである。

 書籍が出版された1997年は、インターネットの普及に伴いEC(電子商取引)などの新たなビジネスが勃興しつつあった時期だ。その後、ネットバブル崩壊の逆風を乗り越え、新たに誕生した多くのIT企業が大企業へと成長し、今のGAFAの時代に至る。その間、クリステンセン教授の指摘通りに、日本企業を含め既存の大企業の多くが新興IT企業などとの競争に敗れ、追い詰められていった。

 日本では「家電王国」とまで言われた家電産業が一気に衰退した。日本の家電メーカーは顧客の様々な要望を取り入れ多機能な製品を作ることで、デジタル化の時代を乗り越えようとした。だが、シンプルな機能の製品を安く販売する新興国のメーカーに海外の市場を奪われていった。

 実店舗での品ぞろえや接客を強みにしていた百貨店など既存の小売業も、新興のEC(電子商取引)事業者に顧客を随分奪われた。多くの小売業は当初、ECの将来性を過小評価し、EC事業への本格参入で後れを取った。時間差はあるものの、FinTechベンチャーの攻勢にさらされる金融機関も事情は同じ。まさに今、イノベーションのジレンマに直面しつつある。

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