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IT投資の前向きな削減はあり

 ITコストについても安易な削減は避けるべきだ。既に多くの企業がITコストを削ってはいけない水準まで削ってしまっているからだ。

 日本の「失われた20年」などの過去の景気低迷期に企業は一斉にITコストの削減に乗り出した。といってもハードウエアの減価償却費やパッケージソフトウエアのライセンス費は削れない。そこでIT部門の人件費や保守運用の外部委託費がコスト削減の格好のターゲットとなった。つまりIT部員やITベンダーの常駐技術者の削減に動いたのだ。

 その結果、それなりの人員を抱えた大企業のIT部門でも、個々のシステムでみれば担当者が1人しかいないという「ひとり情シス化」が進んだ。もしIT部員やITベンダーの常駐技術者の誰かが新型コロナウイルスに感染して長期離脱を余儀なくされると、その人が担当するシステムの面倒を見られる人がいなくなってしまう。まさにITコストを削りすぎたツケである。

 経営陣とIT部門は今のうちに2020年度のIT予算の確実な執行を再確認しておくべきである。結局のところ、老朽化した基幹系システムの刷新などを通じてDXを推進し、その結果としてIT部門の保守運用業務も効率化していくことが最善策であり、唯一の現実解でもある。景気後退により経営が多少苦しくなっても、一切ぶれてはならない。

 もっともIT投資額の前向きな削減ならば、どんどんすべきだろう。例えば基幹系システムの刷新において要件をいま一度精査する。利用部門の独自要求がまぎれ込んで工数増につながっていないかを徹底的に調べ、あれば排除する。そうすれば全体最適の観点からの業務改革を貫徹できるし、投資額の削減にもつながる。非常時こそ創意工夫が求められる。

木村 岳史(きむら・たけし)
木村 岳史(きむら・たけし) 編集委員。1989年日経BP入社。日経ネットビジネス副編集長を経て2010年に日経コンピュータ編集長。13年1月より現職。本誌と日経クロステックにIT業界やIT部門の問題点を斬る辛口論評を執筆中。