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 2020年5月25日に緊急事態宣言が全面解除され、日本は新型コロナウイルス禍の最悪期から脱した。外国のようなロックダウン(都市封鎖)や移動制限といった強力な措置を取らず、新型コロナの感染の有無を調べるPCR検査も十分に実施できなかったにもかかわらず、感染爆発という悲惨な状況に追い込まれることはなかった。

 政府の対策は十分とは言えないのに、なぜ新型コロナ禍の最悪期を乗り切ることができたのか。その理由にはマスク着用の習慣や日本人の体質など諸説あるが、はっきりしたことは分からない。海外メディアの中には「ミステリー」と報じたところもあった。

 それでも1つだけ言えることがある。政府が指導力を発揮しなくても、国民1人ひとりが新型コロナの感染を防ぐために、やるべきこと、やれることを実践したのだ。要請だけで多くの店舗が自主休業し、テレワークを導入する企業が相次ぎ、大勢の人が「ステイホーム」など感染を防ぐ取り組みを日常生活で実践した。いわば国民の民度や対応能力の高さが、自らを危機から救ったと言えるかもしれない。

 これは日本企業のありようとよく似ている。日本企業の経営者がよく使う言葉に「現場力」がある。「我が社の強みは現場力」といった具合だ。経営者がトップダウンで指示を出さなくても現場の従業員らが自発的にやるべきこと、やれることに取り組み大概の課題を解決してしまう。それが現場力だ。

 今回の新型コロナ禍でも、国民が持ち前の「現場力」を大いに発揮したと言ってよいだろう。一方で日本は国にしても企業にしても、欧米や新興国に比べてトップのリーダーシップが弱い。まさに日本という国と日本企業は、そのありようが相似形なのだ。