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 ユーザー企業のCIO(最高情報責任者)から、IT部門の再建の話を聞かされることが増えた。内容は共通している。プログラミングスキルなど部員の技術力を高め、システム開発は原則として内製に戻す。「丸投げ」とも称されるITベンダーへの依存を改め、技術力を蓄積しDX(デジタル変革)に資する組織に変えようというわけだ。

 「IT部門は企業で唯一の理系のコーポレート部門(間接部門)」。以前、大手製造業でCIOを務めた人からそんな話を聞いたことがある。

 元CIOが言いたかったのは、人事や財務といったコーポレート部門の中で、技術者集団で理工学部出身者が多い部署はIT部門しかないということだ。製造業なら研究・開発や生産などいわゆる理系の部署はいくつかあるが、本社管理機能であるコーポレート部門で理系なのはIT部門だけだ。

 私は「なるほど」と思ったのだが、元CIOは話を続けた。「でもね、今やIT部門は他のコーポレート部門と同じ文系の部署になってしまった」。システム開発や保守運用業務はITベンダー任せとなり、IT部員はITベンダーを管理するのが仕事となった。もはや技術者としての仕事は、IT部門からほとんど消えてしまったという。

 元CIOのこの嘆きに共感するIT部門の関係者は多いかと思う。技術者集団との強い自負を持ち、全社の業務を俯瞰できるコーポレート部門という立場を生かし、業務改革を経営に提案しシステム化につなげる――。以前のIT部門はそんな存在だったし、少なくともそうあろうとした。だが今では、そんな能力や熱気は消えた。

 業績不振の際、企業はコーポレート部門を中心に人員削減など合理化を進めた。IT部門も例外ではなく、多くの企業でIT部門のリストラが進んだ。本来なら全社的な業務改革を提起し、業務を効率化することで経営に貢献すべきであったが、そんな「王道」を歩めたIT部門はほとんどないだろう。

 大半のIT部門は他のコーポレート部門と同様、自らの部門のコスト削減や人員削減という形でしか経営に貢献できなかった。その結果、技術力を落とし、外部委託先のITベンダーの管理をもっぱらとする存在になり果てた。