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 平時には変革は難しい。だが天変地異や大きな社会変動に直面すれば、個々の企業にも変革の機運が芽生える――。そんな話をすれば誰もが同意してくれるだろう。そして時は今だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大は大きな災いだが、企業にとっては踏ん切りがつかなかったDX(デジタル変革)に真剣に取り組む機会となった。実際、2020年春に緊急事態宣言が出されて以降、多くの企業がテレワークを推進したことで、Web会議の導入など業務のデジタル化が一気に進んだ。

 9月に発足した菅義偉政権も、デジタル庁の創設など行政のDXを重要政策に掲げ、早速「ハンコの廃止」など分かりやすく、比較的容易なものから改革に着手した。そして今や、日本での「DX熱」は最高潮に達している。このまま変革のモメンタム(勢い)が維持されれば、デジタル革命から取り残されていた日本も、世界の趨勢にキャッチアップできるかもしれない。そんな期待を抱かせる展開だった。

 だが当然と言えば当然だが、一筋縄ではいかない。最近よく耳にするのはシステム開発案件の先送りや中止。DXの要となるはずの基幹系システムの刷新が無期限延期となったという話も聞く。新型コロナ禍による景気悪化で、「DXよりも守り」とばかりに「巣ごもり」に入る企業が増えている。

 テレワークを導入したからといって事業のデジタル変革が進んだわけでもない。多くの場合、従来の業務をリモートに置き換えただけだからだ。「従来の顧客相手に従来通り仕事をするなら可能だが、新規開拓ができない」と嘆く声も聞く。新型コロナ禍が収束すれば業務を元に戻す企業も多いはずだ。

 行政のDXも既に不穏な空気が漂っている。例えば地方自治体のシステムの仕様統一では、住民情報や税、社会保障など17分野のシステムについて仕様を統一するというが、大変な困難が予想される。そのためか「既存のシステムを担当するITベンダーごとに仕様を統一してはどうか」といった話が出ているそうだ。まさかとは思うが、そんなことになればDXのX(変革)が骨抜きになってしまうだろう。