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 以前から噂されていた米アップルによる自動車市場への参入が、いよいよ現実のものとなりつつある。2021年に入って、韓国の現代自動車がアップルと交渉中であることを認めたため、「アップルカー」の現実味が一気に増した。高い参入障壁を築き繁栄を謳歌してきた自動車産業にも、巨大なデジタルディスラプター(デジタルによる破壊者)による脅威がついに差し迫ってきたわけだ。

 そんな状況を受けて、次のような質問を読者にしてみよう。「電動車の時代、デジタルの時代になったとき、トヨタ自動車をはじめとする既存の自動車産業は今のような繁栄を続けていられるか」。さて、あなたは何と答えるだろうか。

 論理的に正しい答えは「分からない。未来は誰にも予測できない」だろう。だがそれでもあえて答えよというなら、私ならためらいなく「今のような繁栄は続かない」、あるいは「多くのメーカーが没落するだろう」と答える。

 理由は簡単だ。産業の歴史を踏まえれば、そのようなネガティブな答えのほうが、「繁栄を続ける」と答えるよりも当たる確率が高いからだ。その根拠の1つは、日本の家電産業の苦い歴史だ。「家電王国」とまで呼ばれた日本の家電産業は、製品のデジタル化とともに一気に没落した。それと同様のことが日本を含め世界の自動車産業で起きる。極めて悲観的なシナリオだが、現状ではこれが一番可能性の高いメインシナリオだと思う。

自動車産業の悲観シナリオとは

 悲観シナリオを示してみよう。まもなくエンジン車全盛の時代が終わり、電気自動車など電動車の時代となる。アップルなどのデジタルディスラプターはそれに乗じて参入してくる。スマートフォン向けに培ったデジタルサービスを武器に、クルマを「走るスマホ」と位置づけ、AI(人工知能)による完全自動運転の実現もにらむ。