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 「デジタル・ドリーム・キッズ」という言葉を覚えているだろうか。今からちょうど四半世紀前の1996年に、ソニーの出井伸之社長(当時)が掲げたスローガンだ。

 今風に言えば「新しいテクノロジーに目を輝かせるデジタルネーティブ」といったところだろうか。「ソニーはそうした子供たちの夢をかなえる企業になる。そのために自分たちもデジタル・ドリーム・キッズになる」。そんな思いが込められていた。

 当時のソニーはAV(音響・映像)機器のリーディングカンパニーとして絶頂期だった。「SONY」は世界中で支持を集めるブランドだったし、米国シリコンバレーの起業家も一目置く存在だった。実際に、ソニーとの提携に成功したITスタートアップの創業者が、提携に至る経緯を誇らしげに語っていたのを覚えている。

 そのソニーがデジタル・ドリーム・キッズとして目指したのは、AV機器やIT機器などをネットワークで連携させ、それをプラットフォームとして、保有する音楽や映画、ゲームといったコンテンツ資産も活用した新たなビジネスを創造することだった。まさに今、GAFAなどが展開するデジタルビジネスを先取りするビジョンだった。

 だが「夢」はかなわなかった。事業部門間の壁は厚く、横の連携が進まなかったのだ。しかもAV機器がデジタル化したことで後発のキャッチアップが容易になり、韓国のサムスン電子など新興国のメーカーに市場を奪われていく。ソニーは長期低迷に陥り、描いた夢はiPhoneを生み出した米アップルなどが「継承」することになった。