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 システム開発プロジェクトの失敗を巡って、ユーザー企業とITベンダーが争っていた訴訟で、またもや逆転判決が言い渡された。2021年4月21日、野村ホールディングスと野村証券が日本IBMを相手取って約36億円の損害賠償を求めた裁判で、東京高等裁判所が一審の判決を覆し、野村側の請求を棄却したのだ。

 投資家が証券会社に資産運用を一任する金融サービス「ラップ口座」向けシステムの開発プロジェクトが2012年11月に破綻。これによりサービス計画が頓挫したとして、野村側が日本IBMを訴えたのが訴訟の発端だ。一審の東京地方裁判所の判決では、請求の一部を認めて日本IBMに約16億円の支払いを命じた。しかし今回の控訴審判決では、野村側の請求を棄却し、未払いの業務委託料など約1億円を日本IBMに支払うよう命じた。

 冒頭で「またもや」と書いたのは、以前にも似たような逆転判決があったからだ。2017年8月の札幌高等裁判所の判決である。病院情報管理システムの開発が失敗した責任を巡り、旭川医科大学とNTT東日本が争っていた訴訟で、旭川医大に100%の責任があるとして、約14億円をNTT東に支払うよう命じたのだ。一審判決では、旭川医大の過失割合が2割、NTT東が8割として双方に賠償を命じていた。

 これらの訴訟では、ユーザー側がプロジェクト管理やシステム開発におけるベンダーの「落ち度」を訴え、一審では裁判所がそれを認めた。しかし控訴審では、ユーザー側が仕様凍結の求めに応じず、新たな機能追加などを求める変更要求を五月雨のように出したことで、手戻りが発生するなどプロジェクトを混乱させた点を重くみた。

パッケージソフト利用の間違い

 ユーザーが要件をまとめ切れず、システム開発の下流工程に至っても、「発注者」という強い立場を利用してITベンダーに仕様変更を迫る。これは、システム開発プロジェクトが破綻する典型的パターンだ。ITベンダーに落ち度があるにしても、ユーザーの非は否定できない。2つの逆転判決は、ユーザーの発注者責任を厳しく問うものとして受け止めるべきだろう。

 ただ、なぜこういった事態に陥るのかについては、もう少し深く突き詰めておく必要がある。