日本で企業や行政機関などのDX(デジタル変革)を担うIT人材が大幅に不足しているのは、紛れもない事実だ。「2030年に最大79万人不足する」との経済産業省の予測が現実のものになるかどうかは分からないが、足元では多くの企業が採用難に直面し、IT人材不足を実感している。
企業からは「DXのために優秀なIT人材を中途採用したいが、そもそも応募者がほとんどいない」といった悲鳴が聞こえてくる。IT人材採用の厳しさは数字でも裏付けられている。転職求人サイトDODAが発表している「転職求人倍率」によると、「技術系(IT・通信)」は2021年4月時点で8.81倍と圧倒的な売り手市場となっている。
今後は行政機関でもIT人材に対するニーズが膨らむ。5月12日に「デジタル庁設置法」などデジタル改革関連法が成立したのを機に、行政機関でもIT人材の中途採用が活発になるはずだ。2021年9月に発足するデジタル庁が採用する民間のIT人材らは120人程度だが、今後は各省庁や地方自治体などでも、IT人材を積極的に採用する動きがでてくるだろう。
IT人材不足はこれから先、ますます深刻化するのは間違いないため、国にIT人材の育成策を求める声が強まっている。例えば自民党は「2025年度までに技術者ら計175万人の育成が必要」との提言をまとめている。
ただ、IT人材不足は単に人材育成の強化だけで解決するものではない。むしろ、IT人材活用の非効率さを解消する必要があるのではないか。
人材育成だけでは解決策ではない
日本企業や行政機関では、依然として独自開発したシステムが多数稼働している。最近でこそシステム刷新の際には、パッケージソフトやクラウドを活用する例が多くなったが、それでも業務に合わせるために大幅なカスタマイズを加えるのが一般的だ。刷新後も利用部門の細かな要望に対応するため、頻繁な保守作業を継続する。