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 2003年に生まれた赤ん坊なら、2025年には大学を卒業して社会人となる。それほどの年月を空費してしまった――。

 政府の規制改革推進会議が2021年6月1日、菅義偉首相に提出した答申の内容を報じる記事に接して、ふとそんなことを思った。答申には、約2万2000ある行政手続きの98%超を2025年までにオンライン化するとの目標が記されていたからだ。

 本来、大半の行政手続きのオンライン化は2003年に完了するはずだった。政府が2001年に公表したe-Japan戦略に次のような目標設定がある。「2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする。類似業務の統廃合とシステム化を進め、ワンストップサービスを実現する」。今回の答申通り、行政手続きのオンライン化が実現したとしても、実に22年もの遅れが生じることになるわけだ。

 改めて、空費した時の長さにがくぜんとする。しかも、政府が不作為を決め込んだこの時期は、日本や世界の行く末に決定的な意味を持つ年月だった。もちろん、1995年のインターネットの爆発的普及を起点にしたデジタル革命が大きく進展したからだ。その認識と危機感は、20年前のe-Japan戦略でも明確に記されている。少し長くなるが引用してみよう。

 「世界規模で進行するIT革命は、18世紀に英国で始まった産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらそうとしている」、「産業革命に対する各国の対応が、その後の国家経済の繁栄を左右したが、同様のことがIT革命においてもいえる」、「我が国のIT革命への取り組みは大きな遅れをとっている。(中略)変化の速度が極めて速い中で、現在の遅れが将来取り返しのつかない競争力格差を生み出すことにつながることを我々は認識する必要がある」

 文中の「IT革命」を「デジタル革命」に置き換えれば、今でも全く違和感はない。これだけの正しい認識と大きな危機感を持ちながら、政府は不作為を決め込んできたわけだ。