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 みずほ銀行の藤原弘治頭取が一連のシステム障害の責任を取って退任するとの観測記事に接した際、率直に言って「その必要はない」と思った。システム障害は避けられないものであり、顧客に多大な迷惑と苦痛を与えたとはいえ、経営者が退任という最大級の責めを負う必要はないと考えたからだ。

 それに「システム障害で経営者が退任」は、多くの企業の経営者らにネガティブな影響を与える。障害発生を恐れ「絶対にシステムを止めるな」などと運用の現場に過重な負荷をかけることにもなりかねない。2020年11月に東京証券取引所の当時の社長が、システム障害の責任を取り辞任した。その記憶が鮮明に残る中で、2人目の退任劇となるのは、あまり好ましいことではない。そう考えていた。

 だが、2021年6月15日に公表されたシステム障害特別調査委員会の調査報告書を読んで、考えを改めた。今回のシステム障害に関する経営責任はあまりにも重大であると認識させられたからだ。そこでシステム障害と経営責任について改めて言及したい。

 「改めて」というのは、東証の社長が辞任した際に、システム障害での対応は合格点であったにもかかわらず、辞めるという形で経営責任を取ったことに疑問を呈したからだ。株式市場の終日停止を招いた重大なシステム障害だったとはいえ、迅速な意思決定で市場のさらなる混乱を回避したほか、当日に記者会見を開いて原因などの情報を正しく伝えようとした点も評価できた。

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 確かに、取引の終日停止を決断せざるを得ない状況を生み出したのは東証自身だ。証券会社との間で取引再開ルールが未整備のまま放置していたのは、経営としての重大な落ち度といえる。しかし、取引再開ルールが未整備なのは歴代の経営陣の不作為であり、当時の社長だけの責任ではない。そうした前提を踏まえて厳しい決断をした上で、迅速に事後対応にあたったのだから、満点とはいえないものの十分に合格点だった。