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 企業のIT部門やITベンダーの技術者に質問がある。自社や顧客企業の経営者に次のように尋ねられたとき、答えられるだろうか。「量子コンピューターは今までのコンピューターと何が違い、我が社の事業にどんなインパクトがあるか。君の意見を聞きたい」。

 多くの人は即答できないだろう。そして「マスコミが作ったブームに乗せられて困ったものだ」と冷ややかな感情を抱くかもしれない。だが、これは怖い質問である。「至急調べた上でご回答いたします」などと言っているようでは、「ITの専門家なのにその程度か」と思われ「聞くだけ無駄」の烙印(らくいん)を押されてしまう。

 量子コンピューターに限った話ではない。経営者は大きな話題となったものには強い関心を示す。事業や経営への影響を見極めるために本質を知りたいと思うからだ。

 以前、コンサルタントからこんな話を聞いた。15年ほど前に地球全体の3D画像を表示するGoogle Earthが話題になった際、クライアントである大手損害保険会社の経営者から「事業にどんな影響があると思う?」と聞かれ、肝を冷やしたそうだ。たまたま同僚とGoogle Earthの可能性について議論していたので的確に答えることができたが、もし即答できなかったら信頼を損ねるところだったという。

 今の量子コンピューターの話題性は、当時のGoogle Earthをはるかにしのぐ。最近、米IBMが開発した量子コンピューターが2021年7月中にも日本で稼働し、トヨタ自動車や三菱ケミカルなど12社が共同利用するとの報道があった。報道に接した経営者は何と思うだろうか。技術者は一刻も早く、量子コンピューターの基本原理、自社や顧客のビジネスへの影響などを整理しておいたほうがよいだろう。