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 デジタル庁が2021年9月1日に発足した。民間から起用するデジタル監の人選が最後まで難航するなど曲折はあったものの、国や地方自治体のシステムを「在るべき姿」に整え、行政のDX(デジタル変革)を推進する体制がようやく整った。

 だが、いま一度しっかりと確認しておかないと、将来の禍根になりかねない曖昧な点がある。それは、デジタル庁設置により目指すデジタル変革が「デジタル分野の変革」なのか「デジタルによる変革」なのかということだ。

 デジタル庁は、各官庁のシステムについて勧告するなど「強力な総合調整機能」を持ち、IT調達予算を一元管理して、国民向けなどの重要なシステムの内製化も推進するとする。自治体のシステムのクラウド移行に向け標準化を進めたり、マイナンバー制度全般の企画立案を一元的に担当したりするなど、行政のデジタル/IT化全般を仕切る存在として発足した。

 デジタル庁をイメージしやすくするには、企業と比較してみるとよい。もちろん行政組織は企業と比較にならないくらい巨大な組織だが、デジタル庁の立ち位置や課題を理解する上では有効だ。例えば国の行政組織を巨大企業グループと見なせば、デジタル庁は持ち株会社に設置されたIT部門、あるいはデジタル推進組織に相当する。

 従来はグループ会社に相当する各省庁で独自にシステムを構築・運用してきたため、省庁間でのデータ連係ができていなかった。しかも各省庁のIT部門には人材が不足し、システム開発などはITベンダー任せ。ITベンダーに支払う料金が適正かどうかも不透明だった。顧客である国民に向けたシステムも各省庁によってバラバラで、使い勝手の悪い代物だった。

 今回のデジタル庁の設置は、この問題の打開を図る。まさに持ち株会社にIT部門やデジタル推進組織を設置するのと同様の発想で、行政のデジタル/ITに関する権限の多くをデジタル庁に集約したわけだ。しかも、システムの内製化などのためにIT人材を中途採用するのも、DXを推進しようとする企業と相似形の取り組みである。