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 岸田文雄政権が2021年10月4日に発足した。デジタル庁を創設した菅義偉前首相が推し進めようとした行政のDX(デジタル変革)、そして日本全体のDXはどうなるのか。はっきり言って、極めて不透明だ。場合によっては、大きく後退する可能性もある。

 根拠は10月8日の岸田首相の所信表明演説だ。この演説の中でDXに関わる部分は「デジタル田園都市国家構想」ぐらいだ。「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていく」とした上で、「5G(第5世代移動通信システム)や半導体、データセンターなど、デジタルインフラの整備を進め」、「全ての人がデジタル化のメリットを享受できるようにする」とした。

 「変革」という言葉を使っているものの、デジタル技術を活用した地域振興策と捉えたほうがよいだろう。菅前首相は所信表明演説で「改革を強力に実行していく司令塔となるデジタル庁を設立する」などと「改革」という言葉を多用したが、一切使わなかった。デジタルについても、デジタル田園都市を除けば、「研究開発に大胆な投資を行う」とした先端科学技術の1つとして述べている程度だ。

 所信表明演説を聴く限りでは、岸田首相のDXに対する関心は強くない印象を受ける。改革という言葉を一切使わなかったことから、DXを含め何らかの痛みを伴う改革を避けようしている感さえある。言うまでもなく、行政のDXとは「デジタルを活用した行政改革」だ。トップのリーダーシップが不可欠なだけに、首相が距離を置けばDXへの機運は一気に失速してしまう。

政府の「CDXO」は大丈夫か

 もちろん新首相は、前任者とは異なる政策を前面に押し出すのが常だし、10月31日に衆議院選挙の投開票を控える。経済成長を重視する従来の新自由主義的政策から、成長の果実の分配を重視する「新しい資本主義」への転換を金看板に、岸田首相は選挙に臨む。前政権が力を入れた政策の影が薄くなるのはやむを得ない面がある。