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基幹系から技術者をシフトせよ

 ユーザー企業が基幹系などバックヤードのシステムでパッケージソフトやクラウドをそのまま活用することが当たり前になり、行政機関も標準仕様のシステムを利用するようになれば、担当していた技術者の多くが「不要」となる。そうした技術者がデジタル分野に移動するようになれば、技術者不足、デジタル人材不足は大幅に緩和されるはずだ。

 もちろん、そのためにITベンダーは自社の技術者をリスキリングしなければいけない。ユーザー企業も、長年にわたりシステムの面倒を見てきてくれたITベンダーの技術者に対してリスキリングの機会を提供し、自社のデジタル戦略の戦力として活躍してもらってもよいはずだ。さらに、技術者へのリスキリングや、自ら学ぼうとする技術者に教育機関が学び直しの機会を提供するリカレント教育に対して、何らかの公的支援があってよい。

 とにかく企業や行政のDX、そして日本のDXを成功させるためには、従来の稚拙なIT活用を抜本的に改め、技術者という人的リソースをデジタル分野にシフトさせるしかない。これから社会に出る若者を育てるだけではデジタル人材不足は解消されないし、素人をデジタル人材にリスキリングするのにも限界がある。日本では技術者の7割はITベンダーにいるのだ。彼ら/彼女らを無駄遣いし続けるか、「有効活用」するかによって、日本の未来は大きく変わるはずだ。

木村 岳史(きむら・たけし)
木村 岳史(きむら・たけし) 編集委員。1989年日経BP入社。日経ネットビジネス副編集長を経て2010年に日経コンピュータ編集長。13年1月より現職。日経コンピュータと日経クロステックにIT業界やIT部門の問題点を斬る辛口論評を執筆中。