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 最近、みずほ銀行のシステム障害を追いかけていた同僚の記者と話をしたとき、興味深い言葉を聞いた。重大なシステム障害を引き起こさないようにするための教訓として、彼は次のように語った。「システム障害の犯人捜しではなく、運用担当者の心理的安全性を確保することで、失敗に学べるようにしないといけない」。

 注目したのは「心理的安全性」という言葉だ。なぜなら、心理的安全性はDX(デジタル変革)など攻めのITにおいて、プロジェクトを成功させる上での重要な概念として、よく語られてきたからだ。その心理的安全性がシステム運用という、攻めのITの対極にある守りのITにおいても重要というのだから、ちょっと面白い。

 心理的安全性(psychological safety)は米ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱した概念だ。「組織において各人が拒絶されたり罰せられたりしないとの確信を持ち、臆することなく発言し行動できる状態」を指す。

 日本でもDXプロジェクトの関係者の間でよく知られており、重要性を語る人は多い。分かりやすい例はデジタルサービスを立ち上げる場合だ。考え抜いたアイデアや企画をぞんざいに扱われたり、失敗を厳しくとがめられたりするようでは、まともに取り組もうとする人はいなくなってしまう。

 既存事業の変革を企てるプロジェクトでも、心理的安全性の確保は必須だ。メンバーは様々な部門から参画するが、変革である以上、各部門の個別利害を超えた企画が求められる。にもかかわらず、メンバーが所属長から「なぜ、あんな提案をしたのか」などと叱責を受けたり、評価が下がるかもしれないと不安を抱いたりするようでは、成功はおぼつかなくなる。

 このためDXの実践においては、経営者がきちんとコミットして本気度を示したり、減点主義の評価制度を改めたり、直属の上司が介入できないよう制度を整えたりといった取り組みが必要になる。要するに、心理的安全性を担保する仕組みを組織やプロジェクトに組み込む必要があるわけだ。