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 政府が目指す経済安全保障体制の確立に対する理解が進んでいる。2022年4月7日に衆議院で経済安全保障推進法案が可決された際、野党の立憲民主党や日本維新の会、国民民主党も賛成に回った。ロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにして、様々な手段で「国を守る」必要性が広く認知された結果かもしれない。

 経済安保を簡潔に言えば、経済面から国の安全保障を確保することである。その具体策として法案に盛り込まれたのは、(1)サプライチェーンの強化、(2)基幹インフラの安全確保、(3)先端技術の官民協力、(4)特許の非公開――の4つだ。経済安保上の脅威としては、主に中国や北朝鮮、ロシアといった権威主義体制、専制体制の国々を想定しているようだ。

 ただし経済安保は通常の安保とは異なる側面がある。同盟国や友好国も「脅威」となり得るということだ。そのことは、かつて米国によって思い知らされた。1980年代に勃発した日米ハイテク摩擦である。

 日本製のスーパーコンピューターの対米輸出に対して米国政府から強い圧力がかかり、研究機関や大学への導入が次々にキャンセルとなった。日本の大手IT企業の社員が米連邦捜査局(FBI)のおとり捜査に引っ掛かり、米IBMの機密情報を盗み出そうとしたとして逮捕された産業スパイ事件も発生している。

 当時、米国は明らかに日本を経済安保上の脅威と捉えていた。日本が教育用パソコンに独自OSの搭載を計画した際にも「不公正貿易障壁」の候補としてやり玉に挙げた。パソコン用OSの分野でも、やがて日本が脅威になるとみていたようだ。日本に対する米国の視線は冷たく、「本当に米国は日本の同盟国か」と思うほど攻撃的だった。

 最近でも、トランプ政権が「安全保障上の脅威」を理由に、日本や欧州の鉄鋼とアルミニウムに高関税を課している。再び同じようなことが起きないのか。例えば、先端技術の官民研究の目玉とも言える量子コンピューターが実用化した際、かつてのスパコンや教育用パソコンと同様の事態が生じる可能性はゼロではない。経済安保の確立を目指すなら、そこまで見通したうえでの「覚悟」が必要だろう。