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 岸田文雄政権が発足した直後に、私は日本の行政DX(デジタル変革)の行く末に強い懸念を示した。岸田首相はデジタルを活用した地域振興策と見なせるデジタル田園都市国家構想には熱心だが、デジタルを活用した行政改革と言える行政DXに対する「熱量」を感じられなかったからだ。

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 最近、その懸念を裏付けるように、行政DXの司令塔であるデジタル庁からネガティブな情報が聞こえてくるようになった。同庁が運用するシステムで個人情報が漏洩するなどのトラブルが発生しており、業務量に比べて職員が足りていないとの指摘がある。1人の職員が複数のプロジェクトを兼務する体制に不満も高まり、10人近い職員が一斉に退職したとの報道も流れた。同庁が主導する地方自治体の基幹システムの標準化に向けた作業にも遅れが生じている。

 だが、こうしたデジタル庁の内部の問題は、行政DXの推進を阻害する問題全体からすれば枝葉にすぎない。行政DXの司令塔が抱える問題なので「大きすぎる枝葉」ではあるが、問題の根幹からすれば大した話ではない。その問題の根幹とは、デジタル庁が「放置状態」に置かれていることである。デジタル庁を通じて行政DXを完遂しようという強い意思を示す言葉が、岸田首相からは全く聞こえてこないのだ。

「抜かずの宝刀」を抜け

 マイナンバーカードに健康保険証の機能を付けたマイナ保険証を2022年4月以降に使うと、医療費が高くなるという「珍事」が発生した。厚生労働省が病院にマイナ保険証への対応を促すために、マイナ保険証を利用した場合の診療報酬を引き上げたため、それに比例して患者の負担額も増えることになったわけだ。