参議院選挙で与党が大勝したことで、岸田文雄政権は「黄金の3年間」を手に入れたのだという。衆議院の解散に踏み切らない限り今後3年間は大型の国政選挙はなく、じっくり腰を据えて政策運営に取り組めるからだ。
だが「黄金の3年間」といった光に満ちあふれたような表現がふさわしいのだろうか。むしろ「試練の3年間」と言ったほうがよい。DX(デジタル変革)をはじめ、脱炭素に向けたGX(グリーン変革)、電力や交通などの社会インフラの再強化、財政再建、社会保障改革、少子化対策、そして憲法改正や安全保障の再構築など課題は山積している。そうした「大きすぎるし、多すぎる」課題に正面から向き合わなければ、日本は立ち行かなくなってしまう。
日本が「課題先進国」と言われて久しい。本来なら課題に向き合うことで、世界に先駆けて新しい社会モデルやビジネスモデルを築くべきであったが、課題解決の先送りを続けて今に至った。2012年に発足した安倍晋三政権が打ち出したアベノミクスでも、金融緩和、財政出動、成長戦略の「3本の矢」のうち成長戦略は不発に終わった。
そして今、日本はいよいよ土俵際まで追い詰められている。政権が安定するこの3年間が最後のチャンスと言っても過言ではないだろう。
そうした中、心配事がある。このコラムでも何度か指摘したが、岸田政権にはDXに対する「熱量」が足りない。もちろん、地域振興策と見なせる「デジタル田園都市国家構想」には取り組んでいるものの、デジタルを活用した行政改革と言える行政DXに、岸田首相が指導力を発揮したという話は聞かない。デジタル庁は「放置状態」に置かれ、同庁が主導する地方自治体の基幹システムの標準化に向けた作業にも遅れが生じているのが現状だ。