全1501文字
PR

 「GAFAの支配から脱却できる」「単なる投機の対象でしかない」などと、相変わらず毀誉褒貶(ほうへん)が激しいWeb3(Web3.0)だが、本当に新時代を切り開く技術トレンド、ビジネストレンドになり得るのか。今回はその可能性について考察してみたい。

 結論から言えば「可能性はある」。なぜならば、インターネットの理想、あるいは長年の夢を実現するために「利で人を釣る」仕組みが当初から組み込まれているからだ。

 インターネットには1990年代に普及が始まったときから1つの理想があった。従来の通信事業者のような、ネットワークの全てを取り仕切る存在を不要にして、人々が自由に情報をやり取りしたり、新たなビジネスに取り組めるようにしたりしようというものだ。今のWeb3の重要なコンセプトは「非中央集権(Decentralized)」だが、もともとインターネットはそのような理想を内包していた。

 1990年代後半の熱狂を覚えている人も多いだろう。個人もメディアを持つことが可能になり、誰もが世界に情報が発信できるようになる。そんな夢が盛んに吹聴された。Webサイトで有益な情報を発信して世の中に貢献しようという人は大勢いたし、広報宣伝のための手段として活用しようとする企業も増えていった。主に個人商店主らがEC(電子商取引)に取り組み始めたのもこの時期だ。

 だが、そんな熱狂は長くは続かない。いくらWebサイトで情報を発信したり、商品を売ったりしようとしても、そもそもアクセスが集まらない。新聞や雑誌などに取り上げられると注目を集めるが、それも長く続かない。この段階では非中央集権を持続可能にする仕組みが不十分だったわけだ。

 ここにビジネスチャンスを見いだしたのが、GAFAなど後に巨大プラットフォーマーとなるIT企業だ。検索サービスをはじめ大規模ECサイト、SNS(交流サイト)、ネット広告の仕組みなどの提供を通じて巨大化していった。自社のサービスにアクセスを集中させることで、GAFAは自らが中心に座るエコシステムを完成させた。