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 最近、大手製造業を中心にデジタル人材の育成に取り組む動きが活発になっている。数百人規模、1000人規模で人材を育成するといった記事がメディアをにぎわしている。中には「全社員をデジタル人材に」といった“壮大”な目標を掲げる企業もある。

 こうした取り組みは、デジタル人材の「獲得」に向けた第2弾と言える。ここ数年、DX(デジタル変革)を推進するために、優秀なエンジニアやデータサイエンティストを中途採用するのが一種のブームとなった。「シリコンバレーより、南武線エリアのエンジニアが欲しい」。2017年、JR南武線沿線に拠点を持つITベンダーに衝撃を与えたトヨタ自動車の求人広告を覚えている人も多いことだろう。

 もちろんトヨタだけでなく他の製造業や金融機関、大手小売りなどがデジタル人材の争奪戦を繰り広げた。デジタル子会社を設立して、従来の給与体系をはるかに超える報酬を提供する動きも相次いだ。だが、優秀なデジタル人材は不足しており、引く手あまたで簡単には採用できない。そこで新たな人材「獲得」策として、既存の社員のリスキリング(学び直し)に多くの企業が取り組み始めたわけだ。

 ただし「全社員をデジタル人材に」という言葉に象徴されるように、デジタル人材の中途採用とは目的が多少異なる。データサイエンティストなど高度なデジタル人材の育成も図るが、主たる目的は社員一人ひとりのデジタルスキルの底上げだ。多くの社員にデータ分析やAI(人工知能)活用、ノーコード/ローコード開発などのスキルを身に付けさせようとしているわけだ。

 デジタル人材獲得の第1弾だった中途採用の主目的は、デジタルサービスの立ち上げや、デジタル技術を活用した新製品の開発を担う人材の獲得だ。それに対して第2弾は、デジタル技術を駆使した業務改革などを担う人材を育てようというものだ。新規事業の創出と既存業務の改革は、いわばDXの両輪。その意味では、デジタル人材の中途採用にとどまらず、社員へのデジタル/IT教育に取り組むのは理にかなったことだと言える。