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 10年も前のことだが、SUBARU(スバル)の当時の社長にインタビューしたことがある。社長就任前に国内の営業改革を成功させた人で「ITによる業務改革は否定しないが、当社ではあまりうまくいっていなかった」としたうえで、次のような話をしてくれた。

 全国の販売会社向けのシステム導入はとても難しいのだという。本社主導で標準のシステムを開発し、各販社の業務を効率化しようとすると、必ず販社から苦情が出るからだ。販社と議論を重ねても、結局は販社それぞれの業務のやり方にシステムを合わせろという話になってしまうとのことだった。

 本来、販社はどこでも同じ仕事をしているはずだ。だが、実際は販社ごとに業務のやり方は異なる。しかも、販社は互いに他社がどういうやり方をしているのかを知らない。だから、自社の業務のやり方をシステムに合わせる必要性を理解できず、従来のやり方に固執する。その結果、新システムを導入しても何の意味もないという事態に陥ってしまうわけだ。

 実は、この話は今進行中の国家プロジェクトにとって大きな教訓となり得る。プロジェクトとは、地方自治体の基幹システムを標準準拠システムに移行させる「自治体システム標準化」である。デジタル庁は自治体に対して、住民基本台帳や国民健康保険など20業務で使うシステムを2025年度末までに標準準拠システムに移行させるよう求めている。

 このプロジェクトが成功すれば、恩恵は大きい。国や自治体などのシステム間でのデータ連係が容易になるほか、システムの開発や保守運用で大幅なコスト削減が期待できる。実際にプロジェクトでは、保守運用費などを2018年度比で3割削減する目標を掲げている。さらに各自治体が業務のやり方をシステムに合わせることで、業務の効率化も実現するはずだ。