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 米国のテック企業で大量解雇が相次いでいる。イーロン・マスク氏がツイッターを買収しCEO(最高経営責任者)に就任した途端、従業員の半数にあたる3700人の解雇に踏み切ったことは、日本でも大きな話題になった。そしてメタ(旧フェイスブック)やアマゾン・ドット・コムも、1万人規模の人員削減に乗り出すと報道されている。

 大量解雇に踏み切るテック企業は、もちろん大手ばかりではない。これまでユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)などともてはやされたスタートアップ企業でも、「750人を解雇」「全従業員の2割を削減」といった大がかりな人員削減計画を相次いで発表している。世界レベルでの景気後退さえもいとわない米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げなどの影響で、米国のテック産業は完全に「リストラモード」に入ったようだ。

 こうした情報に接して、読者はどのように思っただろうか。解雇が容易な米国の雇用制度に改めて驚いた人もいるだろうし、米国のテック企業の「しくじり」から教訓を引き出そうとする人もいるかもしれない。だが、多くの人が気付いていない重要なポイントがある。従業員の大量解雇というネガティブな話題であるために、どうしても見落としてしまうが、これこそがGAFAのような巨大テック企業を生み出す前提条件の1つなのだ。

 クラウドなどを活用したデジタルビジネスでは、市場の大部分を押さえる「Winner-take-all(勝者総取り)」を狙うのが基本だ。スタートアップ企業は投資家から巨額の資金を集め、赤字も辞さず事業を一気にスケールさせようとする。当然、そのリスクを取ってくれる投資家の存在が不可欠で、米国のスタートアップ企業はその点で日本よりはるかに恵まれている。

 だが、潤沢な資金だけでは事業を急拡大させることはできない。事業を支える人材を急成長に合わせて大量に雇用する必要がある。そして今回のように事業に逆風が吹くと、たとえ黒字であっても会社都合で大がかりな人員削減に踏み切る。そんな経営の自由度があるからこそ、大きなリスクを取って、事業を一気にスケールできるわけだ。