国内で空前のIT技術者不足が続いている。転職求人サイトDODAによると、「エンジニア(IT・通信)」の求人倍率は2022年12月時点で12倍を超えた。慢性的な技術者不足が長く続いてきたが、多くの企業がDX(デジタル変革)に取り組むようになったことで、特に最近は深刻度が増している。DODAの求人倍率を見ても、ここ数年右肩上がりだった。
こうした日本の状況とある意味、好対照なのが米国だ。最近、メタやアマゾン・ドット・コム、グーグル、マイクロソフトが1万人規模の人員削減を相次いで発表した。IBMも4000人近くを削減することを明らかにしている。報道によると、2022年に米国のIT企業が公表した解雇者数は計画ベースで11万人。2023年もわずか1カ月で5万人を超えたという。
米国では、新型コロナウイルス禍による「巣ごもり需要」などを見込んで、最近まで技術者の大量採用を続けてきたIT企業は多い。しかし昨今は経営環境が大きく変わり、大規模リストラに踏み切らざるを得なくなった企業が続出したのだ。ただし解雇された技術者の大半は、転職に困ることはないという。IT業界以外の大企業やスタートアップが技術者獲得の格好の機会として採用を強化しているからだ。
こうした日米の状況を比較してみると、日本における「空前の技術者不足」は、単に技術者の絶対数の不足だけが原因ではないことが分かる。絶対数が足りないことに輪をかけて、転職する技術者が大幅に少ないのだ。
米国の場合、企業による解雇に加え、技術者が自ら転職するケースも多い。システム開発プロジェクトなどが完了すれば、その企業にとどまることなく転職する。そんな転職を何度も繰り返す技術者は大勢いる。一方、日本の大企業は終身雇用が基本で、よほどのことがない限り会社都合の解雇はない。転職する技術者も増えてきたとはいえ、まだまだ少ないのが現実だ。