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 企業のIT部門の人たちに聞きたい。基幹系システムなどの保守運用業務の一部、あるいは全てをITベンダーの常駐技術者に任せているのなら、ITベンダーに支払う料金の単価を引き上げただろうか。あるいは引き上げを検討しているだろうか。

 なぜこんなことを聞くのかというと、ITベンダーの常駐技術者の給与水準は原則として、技術者1人当たり月額でいくら支払っているか(人月単価)によって決まるからだ。2023年の春闘は山場を越え、大企業なら5%、10%といった大幅な賃上げの恩恵を受けるIT部員も多いかと思う。それに対して常駐技術者は、料金単価が上がらない限り、昨今の物価高騰に見合う賃上げはなかなか望めない。

 常駐技術者たちが自らの給与水準を客先で話すことはないだろうが、支払っている料金の単価からおよその給与水準は推測できる。IT部員では手に負えないシステムの保守を委託しているため、比較的高額の単価を設定しているケースもあるだろうが、逆にITコスト削減の必要性から安い単価の場合も多いはずだ。IT部員の給与水準より低い単価ならば、常駐技術者が手にする給与は相当低い額になる。

 システム保守運用の委託では、過去に料金引き下げをITベンダーに要請した企業も多いはずだ。ITコスト削減の一環として、毎年のように料金引き下げを要請した企業もあったと聞く。当然、ITベンダーの採算性が悪くなり、技術者は賃上げを望めなくなる。実際に「低い単価に縛られて、最近は給与が全く上がらない」といった嘆きの声をいくつも耳にしたことがある。

 こうした低い単価ならば元請けのSIerでは採算が取れないため、再委託先、再々委託先の技術者が常駐するケースが多い。それでも再三にわたり料金引き下げを要請されれば、常駐する人数を減らすなどして対応せざるを得なくなる。現場に残る技術者は負荷が増すばかりだが、それに見合う報酬は得られない。多くの企業でそんな状況が長く続いてきたのだ。