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 新型コロナウイルス禍が収束したことで、ビジネス街にも人が戻り、以前のような活気が戻ってきた。しかも2023年3月期の決算発表で、各社の業績が総じて良好であることが明らかとなり、日経平均株価も3万円台の水準にまで回復している。

 そして何よりビジネスパーソンの心を明るくするのは、各社で相次いだ大幅な賃上げであろう。春闘での賃上げ率は、連合の5月時点の加盟労組の集計で3.67%(加重平均)。3%台の水準は約30年ぶりとのことだ。物価上昇など心配な要素はあるものの、前向きな気持ちでビジネスに取り組める人も多いことだろう。

 問題は、こうした「上げ潮ムード」が一過性のものではなく持続可能かという点だ。実は日本企業には、持続可能にしなければならない「事情」がある。日本では今後、人材不足が深刻化するから、優秀な人材を獲得し働き続けてもらうためには、企業は賃上げなど処遇の改善を続けるしかないのだ。

 日本の生産年齢人口(15~64歳)は2020年で7509万人。ピークの1995年と比べ1200万人以上も少なく、今後も減少が続く。これまでは高齢者や女性、外国人が労働市場に流入することで補ってきたが、それはもう限界だ。2025年には「団塊の世代」が皆75歳以上の後期高齢者となるし、女性は既に大半の人が働いている。外国に比べ賃金水準が相対的に下がったことで、外国人の流入も期待できなくなる。

 そんな状況のため、日本企業は労働生産性を高めて、他の先進国と遜色のない賃金水準を提供できるようにならなければ、今後の成長は難しくなる。では、生産性を高めるにはどうしたらよいか。その答えは明らかだ。DX(デジタル変革)をこれまで以上に推進していくしかないのだ。

試される経営者の覚悟

 ただし、DXによって生産性を高めるのは容易なことではない。何よりも、DXに対する経営者の本気度や覚悟が試される。生産性を高めるためには、デジタルを活用して業務プロセスなどを徹底的に見直し効率化を図っていく必要がある。デジタル活用により付加価値の高い製品サービスを生み出して、従業員1人あたりの収益力を高めていくことも重要だ。