現在、日本はAI(人工知能)などの最先端技術で米中に後れを取っている。特許出願件数、AI人材の不足、IT教育の遅れを見ても明らかである。
世界知的所有権機関(WIPO)によると、2017年の特許出願件数のトップは中国の138万件(前年比14.2%増)、2位は米国の60万7000件(同0.2%増)である。日本で3位であるものの、件数は31万8000件(同0.03%増)にすぎず、中国には4倍、米国には2倍の差をつけられている。
AI人材についても同じことが言える。カナダのエレメントAIの調査報告「2019 Global AI talent report」によると、世界のAIトップ人材2万2400人のうち約半数の1万295人が米国にいる。次いで中国は2525人で全体の1割を占めた。英国(1475人)やドイツ(935人)、カナダ(815人)が続き、日本は805人で6位。全体に占める割合は3.6%とわずかだ。
日本では、少子高齢化の進行やIT教育の遅れからIT人材やAI人材の不足が明らかである。2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されるが、教員の経験不足、IT環境整備の遅れ、研究開発費の不足など、日本がIT先進国になるには、かなりの時間を要するだろう。
では、日本はどうすればいいのだろうか。
まずは地道に日本のAI技術者を増やし、技術力を上げていくこと。国はAI技術者の輩出目標を設定し、大学などにカリキュラム策定を呼びかけるなど相応に対応している。ただ、人口規模で米中にはかなわないため、数で凌駕(りょうが)することは不可能だ。
劣勢を跳ね返すためには、技術をシェアしオープンにしていくことが重要となってくる。技術仕様やプログラムのソースコードを公開して、開発者やサードパーティーの参入を促し広く普及させることにより、AI人材全般のスキル向上を促す。つまり、オープンイノベーションの導入が重要になってくるのである。
AIのオープンイノベーションのためのプラットフォームは主要各国に生まれつつあり、なかでもグーグル子会社が運営するKaggleが世界的に有名だ。日本では当社の子会社が運営するSIGNATEが最大で、2万5000人以上のAI技術者が登録している。
SIGNATEでは国や企業がデータと共に解決してほしい課題を出し、それを登録技術者が解いていく。応募された回答は原則オープンにするため、技術者同士で解き方を学ぶ自己研鑽の場になる。出題者側の国や企業は自ら雇用しなくても優秀な技術者の知恵や技術を活用できる。
日本のAIに関する唯一のアドバンテージは、社会のニーズが目前にたくさんあることであろう。少子高齢化による労働力不足は深刻化しつつあり、AIやロボットなどの技術を活用して生産性を向上させることは喫緊の課題である。「必要は発明の母」という言葉があるように、ニーズがあることは大きい。技術者の数こそ少ないが、目の前のニーズに合わせた発明は世界に先行できる可能性がある。これを実現させていきたいものだ。