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【質問1】PCをばらまく「GIGAスクール構想」をどう評価する?
【回答】「電子政府を作るからマイナンバーカードを配る」と発想が同じ、PC導入は単なる教具のデジタル化

 そもそも「GIGAスクール構想」とは何か。まず日経クロステックに掲載された記事を引用してみよう。

 全国の小中学校で児童・生徒1人に1台、パソコンなどの学習用端末を配備し、校内LANを整える政府の計画。2020年度末までに学習用端末の配備を目指す。学習用端末を活用し、クラス全員に同じ内容を一斉に教えるこれまでの授業方法から、児童・生徒1人ひとりの理解度に応じた個別最適の学習への転換を目指す。

 GIGAスクール構想は、政府が2019年12月に発表した。関連予算は「1人1台端末」の整備費用を中心に4600億円超。文部科学省は2019年度補正予算に2318億円、2020年度補正予算に2292億円を組み込んだ。端末1台当たり最大4万5000円の補助金を各地方自治体に支給する。

 当初は2023年度末までに配布を完了する計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大をうけて3年前倒しした。感染再拡大による休校措置の継続を想定し、全ての児童・生徒のオンライン学習環境を早期に整える。

 確かにデジタル時代において教育の情報化は避けて通れない道であり、これまで政府が投資に積極的ではなかった分野でもあるので、もろ手を挙げて歓迎すべきところである。筆者も佐賀県教育庁に情報企画監として在職していた際、県内の高等学校の全生徒にタブレットを配布し、全教室に電子黒板を導入するプロジェクトに関わった経験があり、こうした取り組みが全国に広がるのを目の当たりにして感無量である。

 佐賀県では当時、こうした教育への莫大な投資に対しては、多くの人から反対の意見が寄せられた。様々な人から「電子黒板とタブレットを配れば、学生の成績が良くなるのか」と詰め寄られた記憶もある。

 当時、筆者はこうした反対意見を主張する方々に対して「多くの家庭で子供にランドセルを買うが、その値段が安いもので3万円。高いものだと10万円はする。それに比べれば、高校に入学する生徒は早ければ3年後に社会進出をするのだから、彼らにタブレットを配り、使わせることは決して無駄ではない」と主張した記憶がある。

 遅い感はあるが、政府がGIGAスクール構想を積極的に進めようとしていることには、総じて賛成である。しかし、1つ考えないといけないことがある。パソコンやタブレットを導入することは、あくまでも教具のデジタル化にすぎず、本来目指すべきところは「デジタル学習ができる環境」の提供ではないかということである。

 要するに「電子政府を作るからマイナンバーカードを配る」という発想とあまり違いがない。それが気になる。電子政府を実現するのにマイナンバーカードは手段の1つとして必要だと思うが、マイナンバーカードを配れば立派な電子政府が実現できるものではない。それと同じことだ。

 世界各国が教育の情報化に力を入れているのは事実だ。その狙いは、クラス全員に同じ内容を一斉に教えるようなこれまでの教育から、児童・生徒一人ひとりの理解度や個性に応じた個別最適を図る教育へ転換するためである。ならば、GIGAスクール構想においてもハードウエアだけではなく、デジタルコンテンツなども充実させなければならない。